ハンドメイドフォトブックを作る環境、印刷編

先日に引き続き、手作りで写真集をつくることをテーマに書いています。今回は制作環境について。理想的な制作環境を書きますので、最低限これだけは揃えろ、って話ではないのであしからず。最初から揃ってる方がおかしいくらいです。

写真集を自作することはデジタルとアナログの混じった作業になります。今の時代、だいたいは紙に出力するまでがデジタルの作業、その後がアナログの手作業になってきます。なので、フィルムで撮影、暗室でプリントする人は残念ながら今回は対象外です。

モニター

Adobe RGBの色域に対応しているものを買いましょう。なぜならAdobe RGBは印刷の色域と近い色域です。色を合わせる作業(カラーマネジメント)は必要ですが、画面で見たままと同じ色で紙に印刷されるのはフォトブックを自作する上で大きなメリットです。Adobe RGBに対応していないモニターsRGBの色域に合わせていることが一般的です。sRGB普段は意識しませんが、Webサイトなどで使われる色域です。Adobe RGBに比べて主に緑系の色の表現が劣りますがその分、汎用性が高いです。他に、写真向けではProphoto RGBなんて色域もありますが、今回のモニター選びには今のところあまり関係ないので説明は省きます。

カラーマネジメントはハードウェアキャリブレーションに対応しているモニターが良いです。だいたい、Adobe RGBに対応しているモニターはハードウェアキャリブレーションもできる気がします。ハードウェアキャリブレーションは外部の測定器を用いて色を調整する作業です。測定器も安いのから高いのまで、幅があります。測定器に使っているフィルターがゼラチンだったり、ガラスだったりで違いがでます。それによって測定器の耐用年数などにも差が出ます。あとは紙の色やiPadなどの色にモニターの色を合わせる作業もできたりしますが、少し本題から外れてきますので割愛します。ハードウェアキャリブレーションの対義語としてモニターの設定で調整する、ソフトウェアキャリブレーションがありますが、僕はあまり実用的ではないと考えています。

上の写真はハードウェアキャリブレーション中の画面。背景写真は娘の保育園のお遊戯会。自分の持っているモニターがハードウェアキャリブレーションやAdobe RGBに対応しているかどうか気になるところですが、カタログで謳ってなければまず対応していない、といって間違いありません。ちなみに僕はEIZOの『CG2420』を使っています。これはAdobe RGBの99%、さらにデジタルシネマの色域であるDCI-P3を98%カバーしている、映像編集にもよさげなモニターです。ハードウェアキャリブレーションができる測定器が最初からモニターと一体になっているのも便利です。だいたい、色管理をしっかりしているフォトグラファーはほとんどEIZOのモニターを使ってると思います。統計とってないので主観ですが。EIZOではColor Edgeシリーズが何と言っても素晴らしいぜなのですが、プロ向けなのでやはり高価です。下位のFlexscanシリーズでもAdobe RGBに対応しているのもあるので選択肢に入ると思います。DELLも去年あたりからAdobe RGBの色域対応のモニターを発売していますね。安価ではあるのですが、使ったことがないので評価はできません。安価なモニターだと気になるのが色ムラ(モニターの端と中心で色や明るさが違う)などですが、カタログスペックでは見えてこないのでこればかりは実機を見ないといけません。

他にもモニターはサイズや解像度、接続端子、ゲームなどをする場合は応答速度なども色々と見るべきカタログスペックがありますが、写真用途としては第一に色域を気にして、あとは個人の感覚でサイズやらを選べば良いかと思います。そういう意味ではモニター一体型のiMacでは不十分なわけです。iMac Proなんてのも最近発表されましたが、結局、モニターを外部接続で追加し、デュアルディスプレイにしないと写真用途には向かないと思います(Retina Displayも色味としては綺麗だとは思いますけどね、色が合うかどうかは別の話)。他の選択肢として、4Kモニターもありますが、精細な4K映像編集をする、もしくは予算が潤沢にあるのでなければ今の所不必要かと僕は考えます。

パソコン

動けばそれで十分。前に10GBを超えたpsdデータを扱ったことがありました。かなりストレスでしたが、なんとか動きました(2012年版の松のMac mini)。使うソフトの最低条件を満たせばあとは使う人がどこまで我慢できるか、という話になってくるので、一概にどれがいい、なんては言えません。当然、MacかWindowsかもお好みです。ちなみに僕はマカーです。同じ性能ならWindowsのほうが安い傾向がありますが、Macが欲しい人は安価かどうかが問題なのではないのですよ。

ソフト

Adobe使えアドビ。オススメです。むしろ独禁法OK?ってくらいにみんな使ってるAdobe以外に有力なのあんの、って聞きたいです。みんな使ってるので印刷で入稿するときも汎用性高いですし、わからないことあればWeb検索すれば操作方法などはたいがい出てきます。Adobe使いこなせたらそれだけで飯食っていけますぜ、てくらいAdobeです。フリーソフトでも代用できるかもしませんが、僕は使い込んだことがないです。果たしてそのフリーソフトに黒点が補正できるのか?と問いたい。

それに加え、プリント時にカラープロファイルを使えるのが大きいです。これはプリント用紙メーカーがWebなどで配っている『icc』形式のファイルです。プリント時にその紙に適切なカラープロファイルを読み込ませることで、より適切な色を再現するものです。なくてもよいケースも多々ありますが、用意されているならばあったほうがよいです。サイトの奥の方にあることも多いので、なかなかダウンロードページまでたどり着きづらいのですが…僕の経験ではカラープロファイルが適切でなかったために、印刷結果に空の青色のグラデーション部分でトーンジャンプが起こってしまったことがあります。手作りフォトブックを作る上で使う具体的なAdobeソフトとしてはphotoshop(通称フォトショ)、illustrator(通称イラレ)が基本です。イラレは表紙とかのデザインでよく使います。イラレがなくてもフォトショでも代用できますが、イラレのほうが使いやすいです。写真集なのでlightroomやBridgeもあると便利です。in Design(通称インデザ)もあると便利そうなのですが、あいにく僕は持ってません。

プリンター

ぜひいいのを買いましょう。いいプリンターとは高価なプリンターです。ここで妥協するとこれまでせっかく揃えた環境が台無しです。プロ写真向けで、かつ、同じメーカーの中ではインクの数が多いほうがよいです(他メーカー間でインクの数を比較してもあまり意味がない)。メーカーはズバリ二択。CANONかEPSON。僕はEPSONにしました。Nikonのカメラを使うので、プリンターだけCANONだと色が合わなかった時にプリンターとの相性のせいにしそうだなあという理由で、EPSONを選びました(実際はそういうのはないのでしょうけど)。機種はPX-5V。後継機が発売され、今は最新機種ではないですが性能は十分です。プリンターのインクの種類には顔料と染料があるが、顔料がオススメです。手作りのフォトブックだと色んな種類の紙に印刷することになります。比較的、多くの種類の紙に対応できる方が顔料です。

また、A3ノビ対応かA2まで対応か、というのも選択肢です。僕のPX-5VはA3ノビ。A4までしか対応していないプリンターだと、製本時に二つ折りにしただけでA5が最大サイズになってしまうのでオススメしません。A3ノビの紙だと二つ折りにしてトンボつけてもA4サイズの本になります。反対に、A2まで対応しているプリンターは本体が都市住居環境を無視したサイズ(A2の紙含む)なのと、高価である、という2つの理由で僕は諦めました。ちなみにA2サイズの紙に印刷したときは外にデータを持っていきました。カラーマネジメントをしっかりしていれば外にデータを持っていってもある程度安心できます。外にデータを持って行くときはあらかじめプリンターの種類や紙、対応しているデータの種類、バージョン、色域、対応している紙、両面印刷の可否などを調べていくことが大事です。

紙の出力だけでかなり長くなってしまいました。写真のキレイな自宅プリントの方法、というテーマとも話はかなり近いと思います。ただ、これは最低限の環境ではなく、不十分なく紙の出力ができる環境です。いきなりこれを全て揃えるのは富裕層か、仕事での投資ででもなければ難しいです。どれから揃えるべきか、迷うかもしれません。フォトブックだけが目的ならプリンターを先に買うのがいいと個人的には思います。当たり前ですが、紙に印刷されなければ本にはなりませんので。しかし、印刷は外に出すことが前提だったり、フォトブック以外の使用目的もあったりと、人それぞれ条件や優先度は違うでしょうから、それぞれが塾考すべきでしょう。

まとめ(ここを読むだけでも特に問題ない)

  • モニター…Adobe RGB対応かつハードウェアキャリブレーションできるやつ
  • パソコン…使うソフトと求める快適さによる
  • ソフト…Adobeのフォトショとかイラレがよい
  • プリンター…顔料タイプで写真向けのがおすすめ

次回は印刷後の行程について書くつもりです。

2017-06-11 | カテゴリー 手作り写真集 | タグ

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