DJI Inspire 3、半年ほど使っての感想。

前回、DJI Inspire 3とMatrice 30を導入したことを書きました。今回はしばらく触っての感想です。なお、Matrice 30のほうが先に納品されたにも関わらず、飛行機会は圧倒的にInspire 3のほうが多いのでInspire 3について先に書きます。本機については価格ゆえに所持者がそもそも少ないためか、ネット上でもなかなか情報が出回りません。「DJI」を入れずに「inspire 3」だけで検索すると先に同名のスマートウォッチがヒットするくらいです。とはいえ、空撮に限っていえば世界一とも言って過言ではない機体です。

単純に高価格帯なので他機種ほど台数が市場に出ないというのもあるでしょう。予備バッテリーなど、先月末にようやく全て揃いました。サードパーティのアクセサリーも他機種ほど豊富ではありません。Inspire 3は最初のセットだけで180万円くらいですが、レンズがついてません。諸々買うと300万円を超えます。バッテリーも1セットで10万円。空撮用のMavic 3 cineが安く感じられるくらいです。金銭感覚がバグります。スペック云々の情報はいくらでも調べられるので、実際に使ってみてどうなのか、の感じを今日は書いていきます。

1.画質

写真については実はこれまでメインで使っていたPhantom 4 Pro V2.0の1インチセンサーと比べると、価格ほどの差は感じません。もちろん、拡大してみた時のシャープさやディティール、ノイズ耐性、それとコントラストの高い状況での階調は当然Inspire 3のほうが上なのですが、Phantomは価格が1/10です。Mavic 3であればもっと差は縮まるでしょう。写真のみであればInspire 3のフルサイズセンサーを活かすにはもったいない感じです。

むしろ、ピント距離によっては背景が微妙にアウトフォーカスになってしまうこともあり、パンフォーカスが欲しいときは他機種よりも絞りをシビアに考える必要があります。

2.飛行性能

これは比較対象がPhantom 4 Pro V2.0で申し訳ないくらいなのですが、段違いの性能です。低空時の安定性、耐風性能など。都心で飛行するとPhantomシリーズは十分なGPSを掴めないことがありましたが、Inspire 3ではそれが全くありません。個人的に、ドローン黎明期(Phantom 3 など)を第1世代、飛行やカメラが安定してきた第2世代(Phantom4)、通信や障害物検知などの性能があがった第3世代(Phantom 4 Pro、Mavic 2など)と大雑把に区切っていますが、安定性がさらに上がったこの世代(Inspire 3、Mavic 3)は完全に新しい世代と言えるでしょう。

プロポの操作感も上がりました。正直、PhantomシリーズのプロポはExperienceを調整しないと撮影向きとはとても言えない操作感だったのですが、Inspire3はデフォルトですでにいい感じ。特にヨーとロールの感覚は慣れないと初見の機体は難しいと思うのですが、空撮向けによく調整されているように思えました。ジンバルのパンも同時に使うとワンオペでもスムーズなワークになります。

3.運用

買ったときについてくるトロリーケースに追加で買ったアクセサリー含め、一式入ります。便利。もう少しハードケースよりだったら安心感がより増すのですが。サードパーティ製でのハードケースも見ましたが、収納が二段になってるものもあり、現場での展開が面倒そうでした。Inspire 3、夏だとけっこう熱も持つのでスポンジクッションでギチギチ過ぎてもどうかな、と思ってしまいます。純正のケースがちょうどいいサイズなので、離陸場所にしたり、ジンバル取り付けたりするのに便利なんですよね。

ただ、繰り返しますがケースが少しソフトな気がします。車に積むのはいいんですが、その上には別の機材を積みたくない怖さがあります。Inspire 3の価格がその心配の原因となっている可能性はありますが。

これまではmicro SDカードだったので、紛失事故、また万が一があっても被害が最小限で済むように大量に買って一現場ごとに交換して運用していたのですが、Inspire 3は専用のSSD(これも高い)。ほどよいサイズがあるので紛失の心配はこれまでのmicroSDに比べて大幅に減りそうです。SSDはそのままPCにUSB-Cで挿せるので手っ取り早いです。端子がむき出しなわけでもないため、静電気事故のリスクも比較的少ないでしょう。

僕の現場は都心が多いのですが、Inspire 3のサイズ感はたしかにPhantomに比べてデメリットなものの、低空時の安定性を考え圧倒的にInspire 3がいいですね。。着陸時の周囲への配慮は大変ですが。それよりも前述したGPSのつかみの良さなどのメリットが上回ります。今はRTKを申し込んでいるので、さらに面白くなりそうです。なお、純正のRTKのステーションは現場ではちょっと嵩張るかなと思って導入しないことにしました。

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4.RTK

ドローンのGPSだけだと機体位置に誤差が数メートル発生しますが、携帯基地局を使うことでその誤差を数センチメートルまで抑えることができます。この機能をRTK(リアルタイムキネティック)と言います。産業機などで採用されることが多いこの機能が空撮機であるInspire 3に搭載されていることがぶっちぎりのポイント。これを使用することで自動飛行など、ルートが決まった撮影の精度を大幅に上げることができます。

実際に運用してみると、GPSのみでのルート飛行と比較してその精度の高さには驚かされます。ただし、携帯基地局を使うので、純正のRTKステーションを使用しない場合、RTKサービスを展開している通信業者と契約をする必要があります。月額数千円ですので、30万円超えのRTKステーションと比べて検討する必要があります。

周辺に建物の多い都心でのRTKでは上空数十メートルでないとRTK機能が使えない(RTKによってドローンの位置が特定された状態をFixと言います)ことが僕の経験とテストでわかりました(こういう情報もとにかく少ない)。離陸前にRTKサーバーに接続だけしておいて、離陸後、上空で機能をオンにするようにすればDJI機はRTKとの相性が良いかと思われます。

5.総括

総じて、個人的には買ってよかった、というか買うしかなかったと言える機体でした。当面はこれを超える空撮機はないと思えます。出るとすればInspire 4でしょうね。それまで何か新しく導入するとすれば、もう一台Inspire 3を買うことしか考えられません。そのくらいよいドローンです。

自動飛行のプログラムの一覧性がイマイチだったり、他機種ではあるようなAEブラケット機能がなかったり、オートホワイトバランスがイマイチだったりと(建築系の撮影だと輝度マスクなど作ってHDR合成したい要望がある)、細かい点の改善要望はありますが、全体的に高いレベルでまとまっています。このクラスの機体が必要かどうかは価格が価格なので、ケースバイケースですね。必要かつ手に入るなら背中を押したい一台です。

2023-12-29 | カテゴリー 日記 | タグ

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