AD200の配光特性の研究
Godox特集第三回です。
第一回
第二回
今回は配光特性について。配光特性とはつまり、光の芯と周辺への減光の仕方の特性の事です。定常光ももちろん関係あるのですが、それよりはフラッシュ光の問題として扱わられることの多い単語かと思います。理由は長くなるので割愛です。
あくまで特性なので、どうなれば優れていて、どれが劣っている、ということではありません。しかし、例えばクリップオンストロボは以下の意味では使いづらい配光特性を持っています。
つまり、発光の形が四角形であること、光量を増すためにフレネルレンズを使用していることで光の強いところと弱いところにムラができることです。使いやすい光とは一般に、光の芯から周辺部まで滑らかなグラデーションになっている光のことを指すかと思います。このグラデーションが急だと光が硬い、とかグラデーションが緩やかだと光が柔らかい、などと言ったりします。
今回のテストでは配光特性の他に光量の強さも比較したいと思います。現実的に手軽に大光量を得ようと思うとクリップオンストロボになりますが、その分、配光特性が偏る、トレードオフの関係にあるのかなぁと思います。さて、こっから実写です。実写は全てフル発光で比較しています。
それと、あくまで特性なので優劣があるわけではないと前述しといてなんですが、周辺光量の減光のグラデーションが滑らかでないのを今回は配光特性が悪い、と表記します。毎度周辺光のグラデーションが滑らかでない、というのも面倒ですし、なによりそういった光が比較的使いづらいのは事実ですし。
AD200とモノブロックの比較
とりあえず今回のテストの露出設定には一番強い光と思われるGodox AD200のクリップオンヘッドを基準にします。
ISO32(D850で減感) F22 ss1/125
芯は白とびしてます。現像で-2EVしてもハイライトは取り戻せませんでした。かなり強い光です。ただし、予想通り、中心部からいきなり周辺に至る際に光量が急に落ちています。しかも、周辺部で光が漏れています。
一方でこちらは400Wのモノブロックに標準タイプのリフレクター。
中心部の芯だけはAD200のクリップオンヘッドの方が強いです。ただし、配光特性が悪いです。さらにこのクリップオンヘッドは一般的についてるズーム機能がありません。画面全体を満遍なくカバーするので50mmくらいの焦点距離でしょうか。35mmでもまぁ、気づかないことの方が多いかな、くらいです。
光量は圧倒的に強いのですが、その分使い道も限定されるわけです。中心部だけだったら600Wのモノブロックくらいあるのではないでしょうか…
AD200のチューブヘッド
ストロボをチューブ剥き出しで使う人がいない理由がよくわかる一枚です。光が満遍なく広がっているのですが、かなり弱いです。これだけ広いと超広角レンズの画角もカバーしそうですが、そもそもの光量が弱いので使えません。。。光が均一に広がっている、というよりは散漫という印象ですね。
上記+リフレクター
AD200はなぜリフレクターが別売りなのか、謎です。リフレクターによってストロボ光が集光され、標準的なストロボ光になりました。上の400W単体のモノブロックの光量だけを落としたような配光特性です。ただ、やはり芯が周辺に比べて強めです。
上記+ディフューザー
AD200のリフレクターについてくるディフューザーを装着しています。発光管の近くにディフューザーあってもあんまり意味ないだろ、って今まで思ってたんですが、予想を裏切られました。光がかなり柔らいでいます。ただ、当たり前ですが光量も落ちてますね。
クリップオンSB-910
Nikon純正のクリップオンストロボ、SB-910を比較します。やはり光にムラがあります。AD200のクリップオンヘッドよりはいいですね。光量は、リフレクターとディフューザー付きのAD200といい勝負でしょうか。クリップオンストロボは光量自体はそうでもないのですが、フレネルレンズで光量を増している分、配光特性が悪くなる、という特徴があります。
ただし、これで気をつけるべきはクリップオンストロボはズームがついているということ。これは焦点距離24mmで発光させています。当然ですが、ズームを使って焦点距離を長くすればその分、光量も増します。そのトレードオフに配光の範囲が狭まることがありますが、そもそもレンズの焦点距離と連動しているために普段はあまり気にすることはありません。
SB-910は200mmの焦点距離までカバーしますが、グレードが下がると100mmくらいまでしかカバーしなくなります。そういったストロボで200mmのレンズを使うと光量が落ちることになります。
とはいえ、あくまでこれは直射の場合。クリップオンストロボを使う場合は天井に光を当てて反射させる、いわゆる天バン、壁バンもよく使われるので、その場合は関係なかったりします。天バンはこれ以上ないくらい柔らかい光がつくれるのですが、天井の色の影響を受けるのが難点です。そのためロケならともかく、スタジオではあまり天バンなどはしないですね。その代わりにレフ板やカポックと言われる発泡スチロールの別名でバウンスさせたりします。
クリップオン+カサ
上記特性から、じゃあクリップオンはバウンスして使えばいんじゃん、てことでこんな感じのアンブレラにバウンスさせて使ってみました。こんなのです。
この場合、クリップオンストロボの中心がカサの中心とズレるのが難点です。しかし、出来上がった光は思ったよりは均一でした。ただ、バウンスさせた分、光量があまりに足りないのでF5.6まで上げてようやく同じような光になりました。なんか変な光が漏れてるのが気になりますが。
カサ+ディフューザー
さらにディフューザーを装着。クリップオンでも十分に配光特性の良い光はつくれるのだなぁ(ただし、光量が足りなくなる)て感想です。
まとめ
AD200のクリップオンヘッドはかなりの光量です。ただし、ズームがない分、普通のクリップオンストロボよりも使い勝手が悪いです。これでバウンス光を使うならAD600要らないんじゃなかろうか、と思います。ちゃんと光が回るかどうかはまた試してみます。
通常のクリップオンストロボでもモディファイヤーを使うことで配光特性のよい光が作れます。ただ、やっぱロケ用なので道具としてはスタジオワークには使いづらいよね、と思います。
デジタルカメラの進化とともに定常光でいいじゃん、という声もありますが、やはりライティングの基本はストロボ光です。というのも、定常光は露出を稼がないといけなくなる分、どうしても環境光を拾ってしまうからです。環境光ありきのミックス光で撮影するなら別ですが、そうでないなら定常光はかなり光を遮らないと使いづらいです。一方でストロボ光は光量がある分、多少環境光が漏れててもほとんど問題になりません。厳密にはありますが、定常光とは比べ物になりません。それゆえ、配光特性についても知識はあったほうがいいですし、よりよい写真のためには不断の研究が大事なのです。僕自身も今回のテストでいろいろ気づきもあったので、また次回以降、試したいと思います。やるやる詐欺じゃないですよ、このブログはやると言ったらやるブログです(ただし、いつやるとは言っていない)。
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