シフトレンズまとめ、それとNikon PC Nikkorレンズのお作法

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前にNikonのPC-E Nikkor 19mmをお借りしてちょっと使ってみたのですが、そこからなんとなく頭からシフトレンズのことが離れず、いつの間にか、シフトレンズは自分にとって必要なレンズなのじゃないかな、と思うようになり、ついに買ってしまいました。ただし、中古で35mmの、古い時代のレンズです。現行のは高いです。D850が一台買えます。前回も書きましたが、シフトレンズは光軸をずらしてもケラレがおきないようにイメージサークルが広く設計されているためです。レンズを後ろから見たのが下の写真です。後玉がレトロフォーカスタイプになっており、広いイメージサークルの中をシフトするイメージが湧きます。

シフトレンズとは

あらためてまとめますと、シフトレンズとはレンズをずらして撮影することで、通常の撮影では得られないパース効果で撮影できるレンズです。また、レンズのずらし方もシフトとティルトの2種類に分けられ、それぞれ得られる効果が異なります。シフトとはレンズを水平に移動させ、パースをずらします。

通常、カメラを上に向けて撮影するとパースがうわすぼみになり、台形になりますがシフトを行うことでそれを補正できます。建築写真でよく使われる撮影方法ですが、最近はデジタルで後処理できちゃいます。しかし、撮影時にファインダーで効果を確かめながら構図を決められるメリットがあるとよく言われます。他にはパノラマを撮影するときにもよく使われるそうですが、現代だと超広角レンズが充実しているのでそれで一発撮りしたほうがさすがによさそうですね。

もうひとつのティルトはレンズを斜めに動かすことで被写界深度を調整します。ブツ撮りで商品全体にピントを合わせたいときによく使われます。前回の写真のように逆にアオることで被写界深度を極端に狭くするとミニチュア風にも撮影できます。ただ、これもデジタルな後処理でいくらでも可能です。シフトもティルトも、それぞれ大判カメラの蛇腹でできたことをやろうというところから始まっています。大判カメラでは、さらに同じシフトでもライズとかフォールとか、移動させる方向によって名称が違いますが、シフトとティルトの違いだけ覚えておけばでいいと思います。シフトが水平でパース調整、ティルトが斜めで被写界深度の調整、です。語呂合わせはありません。

PC Nikkor 35mmについて

このレンズはシフトのみでティルトはできません。PC NikkorのPCとは「Perspective Control」でそのままパース調整の意味なのですが、ごく初期の説明書では「Perspective Correction」でパース補正の意味でした。だからなんだって話ですが、うんちくな話題にはよいかと思います。

このレンズは同じ名称でモデルチェンジがあり、そのあたりはオールドNikonファンから熱烈に支持されるサイト、ニコンカメラの小(古)ネタ様に詳しいです。さらに、モデルの中でも外装の違いがあるようで、例えばD850の取扱説明書、276ページの「使用できないレンズ」の中ではこのPC Nikkor 35mm F2.8は製品No.851001〜906200については装着できないことにされています。おそらく、こういう系統のレンズではシフトノブがペンタ部に干渉する、というのが多いのでD850においてもそれかと思われます。鏡胴は昔のNikonらしく、金属製なので指紋つきまくりです。

PC Nikkor 35mm F2.8の使い方

上から見ると写真のとおり。レンズの前玉のほうから、

  1. 最小絞りを調整するダイヤル
  2. 絞りダイヤル
  3. ピントリング
  4. シフトノブ
  5. シフトの角度を調整するダイヤル

の順で調整できる項目があります。このうち、普通のレンズにないのは1、4、5です。順番に説明します。

1の最小絞りダイヤルはこのレンズ独特のものかと思われます。2の絞りダイヤルがこれ以上回らなくなる、リミッターのようなものです。このレンズの最小絞りはf32ですが、この1のダイヤルをf11に設定しておけばそれ以上は2の絞りダイヤルが回らなくなります。なぜこんなのがあるのか不思議に思えますが、使ってみるとわかります。それは、撮影時に5で調整するシフトの角度によっては絞りダイヤルがカメラの下部など、正面から見えない位置にくるのです。そのときにあらかじめ1のダイヤルでf8で撮影しよう、とかf16で撮影しよう、と決めておけば2のダイヤルをいっぱいに回すことでいちいちカメラの下部を確認せずともその絞り値で撮影できるわけです。このことは、シフトレンズが三脚を用いて撮影される場面の多いことを考えれば合理的です。

2の絞りダイヤルは通常の絞りと同じです。ただ、このレンズの特徴として手動絞りがあります。一般に、半世紀以上前のNikon最初の一眼レフ Nikon Fの時代から絞りは自動絞りです。自動絞りというのはシャッターを切った瞬間に自動的に設定した絞り値に絞り込まれる仕組みのことです。今のカメラに慣れていると当たり前に思われますが、はるか昔のカメラは撮影時にその絞り値にまで自分で絞り込まないといけないのが当たり前だったのです。これもそのひとつ。誤解している人もいるかもしれませんが、レンズはシャッターを切るまでは開放絞りです。そうでないとファインダーが暗くて見づらいからです。よく開放絞りがf1.4とか、大口径のレンズのことを明るいレンズ、と言いますが、これは明るく撮れるレンズということではなく、ファインダーが明るいレンズが元なのだと思います。

面白いことにこのレンズの絞りは無段階絞りです。最近はカメラ側で絞りを1/3段、1/2段で調整できますが、このレンズはその中間にも調整できるわけです。実はこれだとムービー撮影時に有利なのですが、そもそも使う機会の少ないこのレンズでムービーを撮るなんて、どんなにマニアックですか、というツッコミが自然と入ります。

3のピントリングは特に言うこともないです。普通のレンズと同じ。最短撮影距離は0.3mです。焦点距離が35mmなので、この時代では普通。昔の単焦点レンズはマクロレンズでもない限り、焦点距離×100くらいが最短撮影距離でした。50mmなら0.45mなどが多く、それ以下だと寄れるレンズなどと言われていました。

4はシフトノブ。これを回してやるとレンズがシフトします。最大11mmシフトします。

5のダイヤルでシフトの角度を調整できます。30°刻みでシフトできますが、主に使うのは縦横90°の4方向かと思います。ダイヤルに7、8、11と数字がふってあるのですがこの数字の意味するところがちょっとわかりません。宿題にさせてください。

実際の撮影では、撮影のイメージに合わせて最初に構図を決めることになると思います。その後、イメージに合わせて5のダイヤルと4のノブでシフト量を決定。次に3のピントリングでピントを合わせます。欲しい被写界深度(このレンズの場合、だいたいパンフォーカスですよね)に合わせて絞りを決めたら1のダイヤルをそれに合わせ、シャッターを直前に2のダイヤルを回して絞り込んで、最後にシャッターを切る、という手順になるかと思います。

すごく面倒な撮影手順なので、玄人向きレンズとも思えますが、シフトをしなければ普通の写りの良い35mm単焦点レンズとして使えます(シフトレンズはイメージサークルが広い分、一般的に写りがすごくシャープです)。デジタル時代特有のカメラ宗教『等倍でモニターチェック教』の信者ではないので、比較はしませんがD850の4500万画素にも対応できそうなくらいです。僕自身、遊びや趣味性で買ったつもりはないのでしばらくこのレンズをD850につけっぱなしでいようと思います。Dfだと一手間かければ絞り値もExifに残せますが、シフトレンズって高画素機が似合う印象ですので。

あとどうでもいいんですが、10月にもなって今年初めて買ったレンズです、これ。

2017-10-15 | カテゴリー カメラ | タグ