カメラを買う、その最初の一台の選び方を誰にも聞かれてないのに長文にしてここに記す

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先日、新聞を読んでいたら「秋だカメラをはじめませんか」的なカメラの選び方を書いた記事がありました。試しに検索してみたのですが、どうもネットにはないようです。そのため、特定はしませんが、ずいぶんと色々と酷いことを書いている記事だなあ、という感想です。日本写真家協会の会員の方が書いたそうですが、偏見で言わせてもらえばこれを書いたのは老人です。

まずなんといっても情報がデタラメです。カメラの構え方で「左手はレンズを持ち、ピントを調整します」なんて図がある。何十年前の話をしているのでしょうか。AF(オートフォーカス)中にフォーカスを調整できるレンズはもちろんありますが、ある程度以上のクラスのレンズです。これからカメラを買う、という初心者が使うレンズのほとんどはAFに設定しているときにピントをいじったら壊れる可能性があります。危険です。次に、大きく重たいカメラは避けましょう、とも書いてますが、これは手が大きい人への差別です。手が大きい人にとっては小さいカメラはグリップが手に馴染まなくてかえって疲れることもあります。個人的にけしからんと思うのは中古はダメと書いていること。何も考えずに中古を選ぶのは確かに危険です。しかし、本文を読むと中古がダメだという理由がデジカメの機能はどんどん進歩しているからとか。古い!それは数年前の話ですね。古い。最近のデジカメの基本性能はもう十分です。初心者が例えばキヤノンの5D4についてきた新機能、DPRAWを使いこなせるとは到底思えません。むしろ、それを使いこなせるくらいになったときは別の新機能が出てるんじゃないでしょうか。予算に合わせて旧機種でもワンランク上の機種を選択できることは中古のメリットです。最後に、ご丁寧にネットの情報は玉石混合だからあまり信じるな、と。まあ、間違いではないのですが、それを書いているその記事がそもそも石でどうするんですか、という話です。

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そもそも誰がどんなカメラがいいかなんて十人十色、万人向けのカメラの選び方というのは難しいものです。だから量販店の家電売り場にはカメラはあれほどいろんな種類が売ってあるのですよ。写真の始め方ですら人それぞれです。このデジタル全盛期の時代にフィルムから入ったっていいわけです。お金と時間があれば。その人の用途によってはぶっ飛んだ未来を先取りしたというシステムとして有名なGXRだってお勧めする場合もあるかもしれないのです。だから、基本的にカメラが欲しいと相談されたらヒアリングから入らなければいけないのです。どういった用途で使いたいか、どんな写真が撮りたいか、好きか、質問項目さえ人によって変わってきます。僕も相談に乗ることがたまにありますが、やはりヒアリングから入ります。質問に答えるのを面倒がる相談者には適当なのを勧めることにしていますが、みんな高いお金を出してハズレカメラを買いたくないのか、また、なるべくよいカメラを選びたいのか、真剣に質問に答えてくれます。ただ、こうして相談には乗れても、疎いメーカーもあります。僕の場合は例えばオリンパスパナソニックあたりは詳しくないです。マーケティングやメーカーの事情もあるのでしようが、一時期、家電か!ってくらいの間隔で新機種を出したりして、スペックの違いを覚えるのが面倒になって諦めました。なので、どうしても自分が使っているメーカーやそれと比較できるメーカーを勧める傾向にあります。

長くなりましたが、ここまでが前置きです。しかしあえて万人向けのカメラの選び方を書いてみようというわけです。

カメラにはレンズを交換できるものとできないものがある

驚かれたでしょうか。もう一度申し上げますが、カメラにはレンズが交換できるものとできないものがあります。僕もカメラに詳しくなる前は知りませんでした。レンズとはカメラの正面についてるガラスとそれを包む筒からなっています。レンズが交換できるものは一眼レフやミラーレスと呼ばれる名称で売られています。それに対してレンズが交換できないものはコンパクトデジカメと呼ばれています。コンパクトデジカメの中でもレンズ交換タイプと変わらない大きなセンサーを積んでいたり、描写を突き詰めて、また、高機能だったりするものを高級コンデジとか言ったりします。富士フィルムのX-100とかソニーだとRX1とか、リコーのGRシリーズなどが有名です。あとは一眼レフに見た目が似ているけどもレンズが交換できないタイプもあるので気をつけましょう。24倍ズームとか、50倍ズームなんていう売り方をしていたらそれはレンズが交換できるタイプのカメラではありません。俗にネオ一眼などという名前で呼ばれていることもありましたが、何がネオだ、って話ですよ。このシリーズはNikonの「COOLPIX P900」というカメラが最近は人気です。しかし、このネオ一眼というタイプのカメラもカメラの使い方がある程度わかっている人が買うものだと僕は思いますので、最初の一台にはふさわしくないんじゃないかと考えます。光学83倍ズームと謳われてそれが何を示すのかわからん人向けのカメラではないです、少なくとも。

では、最初の1台目のカメラにレンズが交換できるものとできないもの、どちらを選ぶべきかということですが、今後、レンズを買い足していくかどうかだと思います。予定は未定だ!という人はレンズを交換できるもののほうが汎用性が高くなるのでそっちのほうがいいと思いますよ。結局レンズを買い足さなくなっても、レンズを交換しなければレンズを交換できないカメラと変わりないですし。汎用性はカメラを選ぶ上で大事だと思いますよ。汎用性とは平たく言えば色々なアクセサリーに対応して、それによっていろんな場面に対応出来るということです。ガンダムで言えばガンダムですね。いろんな拡張パーツを装備できるという点で。ガンダム知らない人はエヴァンゲリオンだと思ってください。あれは汎用人型決戦兵器とアニメの中でも言われていますから。

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一眼レフとミラーレスのどちらを選ぶか

次に、レンズ交換式のカメラを選ぶとして一眼レフにするかミラーレスにするか、という問題があります。違いはファインダーです。ファインダーとはカメラの主に背上部についているもので、それを除くことで被写体やピント、諸々のカメラの設定を確認してシャッターを切る目安とするものです。こう書くと難しそうですが、つまりは覗き窓です。一眼レフはこれがレンズを通った光をそのまま除くのに対し(光学ファインダー)、ミラーレスはレンズを通った光をセンサーがキャッチし、それをファインダーに映し出しています(EVF : エレクトリック ビュー ファインダー、だったかな)。背面液晶にそのまま映し出すものもあります。こう書くと、重箱の隅をつつくようにレンジファインダーなどを持ち出す輩がおりますが、基本的にそういう人はあなたのカメラ選びに真摯に向き合っていないので、そういう人に相談するのが間違っています。レンジファインダーとは現行ではライカが採用しているタイプのファインダーです。あの高級カメラの代名詞、ライカです。もしあなたがカメラを買う予算が潤沢に(日本円にして7桁くらい)あるなら選択肢に入れても良いかと思います。

一眼レフは光をファインダーに送るためにミラーボックスというものがカメラ内部にあり、そのために比較的大きめのボディになります。ミラーレスはミラーがないので(だからミラーレスという)、コンパクトです。一眼レフはファインダーが光学なので、電池が減りません。電源を落としていてもファインダーを覗けます。一方のミラーレスは必ず電源を入れる必要があります。カメラで最も電池を消費するのがこの表示なので、一般的にミラーレスのほうが一眼レフに比べて電池の持ちは悪いです。モデルにもよりますが、倍は違います。実際には参考になりませんが、カメラのスペックに一回の充電で何枚撮れるか、目安がカタログに書いてあるので調べてみてください。ミラーレスの場合、実際はその枚数よりも多く撮れることは少ないですし、反対に一眼レフはカタログに記載以上の枚数が撮れることが多いです。経験的なものですけども。旅行などには小さいミラーレスがいいという声もありますが、ばちばち写真を撮る人は電池がもたない可能性がありますので、予備バッテリーの用意が必要です。それと、一眼レフは大きく、ミラーレスはコンパクト、と言っても上位機種になってくるとそのレベルに伴ってレンズも大きくなるので両者の差は縮まります。ミラーレスがコンパクトなんて、冗談も大概にしろ、というサイズにはなります。ストロボをつけようものならそれはもはやカメラがおまけみたいなサイズになってきます。

ファインダーについて言えば、ミラーレスは一度センサーがキャッチしたものをファインダーに映し出すので現実よりも若干タイムラグがあります。それゆえ、ミラーレスは動きものに弱い、光学ファインダーの一眼レフのほうが強い、とも言われます。一時期はミラーレスのオートフォーカスが遅いのも動きものに弱いと言われる理由でしたが最近は速度が上がってきています。また、ミラーレスでも上級機種になるとファインダーに表示するまでのタイムラグが少なくなっています。将来的にはミラーレスが一眼レフを凌駕する、とも言われていますが、多分、そう言っている当の本人もそれがいつのことになるかはわかっていないはずです。しかし、まだ現状ではほとんどのプロは一眼レフを使っています。一眼レフかミラーレスか、それは店頭で実際に持って見ることが良いと思います。そして、ファインダーも覗いてみてください。ミラーレスの場合、上位機種の方がよいファインダーになっていることが多いので、参考にそれも覗いてみて比較すると良いでしょう。ミラーレスは結局、電子的な映像のために肌に合わない人もいます。しかし、カメラの設定がそのまま反映されるため、シャッターを切ったらどういう色合いになるかなどが一目でわかるメリットもあります。

中古カメラについて

誰とも知らぬ人が前に使っていた、という生理的な嫌悪さえなければ基本的にお勧めします。当然、新品より安く買えます。前述しましたが、デジカメの進歩はある程度完成されました。多分、10年後に今のカメラを使ってても別に変じゃないと思いますし、仕上がった写真を見ただけではわからないと予想します。エントリー機種に至ってはスペックがほとんど変わらないのに中身のセンサーも変わらず市場価格の調整のためほぼ名前だけ新機種になったんじゃないかと思えるものさえあるくらいです。そのため、現行機種より一つ前の機種で、機能は変わらないのに半額くらいで買える、というケースもあります。しかし、中古は選ぶ目をもった人がいないと難しいです。それはカメラに詳しい知人でもいいですし、信頼できる店員ならそれでもいいです。一台目にカメラを買う人がアドバイスなしに選べるものではないです。例えば、僕はNikonの600万画素のD40が大好きなのですが、これは中古で売っていれば1万円代で買えます。レンズを選んで買っても3万円を切ります(DX35mm f1.8 )。それと、最低限のこととして、保証期間がちゃんとあるところで買うのをお勧めします。保証期間があっても一週間程度では不具合はわからないと思いますので、そういうところも僕ならパスします。

ブロガーのお勧めのカメラは話半分程度にしよう

ほとんどカメラに詳しくないのに、ブログに最適だとか、写りがいいとか。彼らは購買意欲を刺激するのはプロですが、写真について言えばほとんど素人に毛が生えたようなものです。そもそも何故いろんなカメラの比較もせずにカメラの良し悪しを語れるのか、考えればわかるはずです。あるカメラのここがすごいと彼らが言っても、他のカメラもそこがすごかったりしますよ。スペックの話しかしてないようなのは論外です。酷いとソニーの一眼レフはミラーレスだとかトンデモな話をします。専門用語を使うのはせめてザイデルの五収差を語れるようになってからにしていただきたいものです。彼らの言葉は迷いのもとです、仏教用語でいうところの『無明』です。悪いカメラではないのかもしれませんが、あなたにぴったりのカメラがそれとは限りません。

メーカー論

もしも、写真で仕事をしたいなら一眼レフかなあ、と思います。まだプロの中で一眼レフのシェアはミラーレスを大きく上回っています。オリンピックでカメラマン席を見れば一目瞭然。その場合、NikonとCanon、どちらを買っても満足はできると思います、できなければ腕ですね。リコーペンタックスも一眼レフはありますが、プロの中でのシェアは低めです。何故仕事をする上でメーカーのシェアが大事かというと、汎用性です。個人的に、プロとはどんな現場でも及第点以上の結果を出さなければいけないと思っています。ある場面ではうまく撮れたけど別の場面はちょっと苦手だったから写真が撮れなかった、では信用を失います。その意味でも、汎用性に優れているカメラ、メーカーであれば機材やサポートが充実していますし、メーカー純正品以外でも様々なアクセサリーが揃っています。必然的に、撮れない状況がなくなっていきます。他に、動画にもウェイトを置くならソニーが人気です。パナソニックももともとカムコーダーを作っているだけあって評判がよいですし、Canonの一眼レフも動画には強いです。個人的には富士フィルムのカメラも好きです。特に、最近発売されたX-T2。ちょっと専門的なことを言えば、4k動画をlogで内部収録できたらNikonから鞍替えを本気で検討していたところです。危なかった。もし僕が富豪なら富士フィルムのカメラも集めていました。

簡単にカメラを買えないのはカメラメーカーを替えるとまた一からレンズを揃えなければいけないからです。基本的にカメラメーカーが異なれば別のメーカーのレンズは装着できません。カメラとレンズの接続部分のマウントが違うからです。マウントさえ合えば違うメーカーのレンズもカメラにつけられます。マウントアダプターと言って、別のマウントのレンズを別のカメラにつけるアダプターもありますが、それはそういう趣味の世界の話です。仕事で必要に迫られて使うのでなければ、数十年前のレンズを今のデジカメに装着して昔のレンズの写りを楽しむ、といった使い方が主流です。そういう撮り方をしたいならミラーレスが人気です。現状では特にソニーのカメラが選ばれることが多いようです。僕もちょっと変な使い方でPENTAXのカメラにNikonのマウントのレンズをつけたことがあります。しかも逆向きに。

予算

カメラ購入の相談を受けるときに予算がいくら、という話を聞くこともあります。そうすると、必然的にこれしかないよ、という結果もでることもあるですが、もうちょっと予算がんばれれば、と思ってしまうケースもあります。貯金の関係もあるでしょうが、予算を一度決め、自分に必要なカメラの相場を知った上で予算にフィードバックするのも大事です。先の例のようにもう少しがんばれば自分の本当に必要なカメラが手に入る、となればそれを工面する努力をしてみるのもいいでしょう。予算が余るようでしたらレンズやストロボなどのアクセサリー、あるいは写真を見るためのパソコンなどに使うのも手です。いいカメラを買うといいパソコンがあるべきですからね。特に色が合わないとか、緑に深みが欲しいとか、そういった話になってくると高級モニターが必要になってきますし、3600万画素というような高画素の写真を撮るようになるとサクサク動くパソコンのパワーや大容量のハードディスク、Photoshopなどのソフト代。。。お金はいくらでも使い道はあるのです。

見た目大事

これはカメラに限らずなんでもそうで、僕が常々ずっと思っていることですが、結局愛着をもって使わなかったら意味がないのです。多少使いづらさがあってもそれ以上に気に入ったカメラであれば長く使うのです。日本人はとにかく見た目と機能を別に捉えたがりますが、『デザイン』という言葉を『見た目』と同意義に捉えられる風潮が正されない限りは変わらないのかとも思います。変にデザインを特別にしたがる家電メーカーの罪かもしれません。機能と見た目を分離するのはデザイン的には100年前の思想です。かっこいいことを言うと『見た目』とは『精神的機能』なのです。話題が逸れました。つまり、実際に手にとってみて、しかも、見た目が気に入ったものを選びましょう、ということです。

まとめ

実はある程度適当でもなんとかなります。何度か書いていますが、僕がニコンにしているのは初めてデジタル一眼レフを買いに量販店に行ったときに予算内で買えたのが当時、D40だけだったからです。今はNikonでよかったと思っています。運が良かっただけかもしれませんが。まあ、でもきっとこの長文をここまで読んでくれたあなたならカメラを選ぶときはじっくり吟味できる人ですから、何を買っても後悔しないとは思いますよ。ほら、強くなれる水を飲もうと思ったら、実はただの水で、その水を手にいれる大変な道中こそが実は修行だった、という例もあります。それと同じです。自信を持ってカメラを買いに行きましょう。

2016-10-26 | カテゴリー カメラ | タグ

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