日本の住宅事情史に蛍光灯と白熱灯というものがかつてあった、という時代がくるのかな

東京駅 丸の内 夜景

地味なニュースの分際で驚きが大きかったことを書きます。

政府は、エネルギーを多く消費する白熱灯と蛍光灯について、国内での製造と国外からの輸入を、2020年度をめどに実質的に禁止する方針を固めた。省エネ性能が高い発光ダイオード(LED)への置き換えを促す狙いだ。

朝日新聞からの引用ですが、すぐ記事が消えるのでリンクは貼りません。かわりに、このブログにはあまり縁のないアゴラの記事をどうぞ。

白熱電球撲滅の運動は僕が大学生だった10年以上前からちらほらとでてきたように思います。白熱電球風のLEDなんて小賢しいシロモノはここ数年の間に台頭してきましたね。まあ、我が家でも仕方なく使っていますが。写真やムービーの世界でもLEDは使われるようになってきましたが、僕はLEDはまだまだこれから進化するもので、今の時点で白熱灯、蛍光灯をなくすことを決めるのは時期尚早と考えております。蛍光灯や白熱灯がいずれレトロになるのは時代の必然で、僕はLEDが嫌いというわけでは全くありません。代替にLEDが使われるほどLEDは十分な性能ではないと思うものであります。

理由の一つはLEDがまだ十分なRa(演色性)がないこと。最近のLEDでようやく高い演色性を謳う製品が出てきましたが、それでも蛍光灯にすら及ばない低い演色性のLEDがまだまだ一般的です。LEDの光って貧相なんですよね。十分な可視光線の波長を含んでいないからです。LEDの白熱灯色にイマイチあったかさを感じないのはRaが低いからだと思います。実は白熱灯はあんな偏った色温度でありながら、Raがほぼ100というとんでもないスペック。Raが100というのは太陽光とほぼ波長が同じなんです(もちろん、赤外線紫外線は除きます)。それと、LEDの光が拡散する角度がもっと広ければより電球に近づくでしょうね。

LEDやRaについては以前、記事を書いたのでよかったら参照してください。
ないなら作ればいいじゃない!フォトグラファーのためのデスクライト

二つ目はLEDらしいデザインがまだ少ないこと。電球みたいな形をしたLEDなんてしょせん偽物です。電球だからこその電球のカタチです。それを表面上だけ真似したLEDなんて、オリジナルがもはや不明なヨーロッパ風の外見でありながら、その中身はただの従来工法の木造である日本の建売住宅となんら変わりません。ハリボテです。LEDはLEDの特性を活かしたカタチを目指すべきです。そのあたり、僕のデスクライトにもしているテープLEDなんていいと思いますけどね。切って使えるあたり、デザインの可能性を感じます。

三つ目はまだ蛍光灯が生きている分野があるということです。写真の色を見る色評価用蛍光灯というのがあるのですが、これは先ほど述べたRaが97くらいあります。色温度も5000kで、色を適切に見るのには欠かせません。写真以外の世界はよくわかりませんが、まだ蛍光灯、白熱灯が必要とされている分野はあるのではないでしょうか。それこそ、アゴラのリンクにあったような飲食店など。

政府は今回の決定に際し、単にLEDの経済性にしか目がいっていないようです。しかし、照明は国民の暮らしを基礎から支える大事なもの。空間を支えるように演出し、そこにいる人々の精神に無意識的、意識的問わず影響を与えます。目先の経済性のみならず、50年、100年先の豊かさを見据えて検討してほしいものです。まあ、光の質もつまらなく、事務的で演色性もなく寒々しいだけの蛍光灯は今すぐ駆逐されて構わないとは思います。

2015-11-26 | カテゴリー 考えごと | タグ

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