ドローンの規制についてぼくがかんがえたこと
ドローンが墜落したり、ドローンが墜落する事件が相次いで社会的にも話題になりましたね。先月、総務省から「「ドローン」による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」なるものがでて、一読しようと思いつつも日々の忙しさや虚しさにかまけて本日まで読まずにおりました。それで、いい加減読んでみるか、と読んだところ、うーむ、とうならざるを得ないものであったため、パブリックコメントを出す前に自分自身の考えをまとめるものとしてここに書こうとするものです。なお、今回掲載する写真は単に最近撮った我が家のイモリであり、活字の合間の一休みのようなもので、記事内容と特に関連性はありません。僕は「撮る側」、「撮られる側」という視点で見ると「撮る側」であることのほうが多く、本記事もそちらに偏った視点で書いています。以前、肖像権についても「撮る側」の視点で書いてます。今回の話とも若干かぶるので拙文ですが、よかったら合わせて読んでください。
まず最初に、このガイドラインのタイトルがまずいです。正しいタイトルのつけ方をプロブロガーにお金払って聞いた方がいいんじゃないか、というくらいにまずい。タイトルは内容を要約したものでなければなりません。この「「ドローン」による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」からできるだけ修飾語をそぎ落とすと「ガイドライン」の一単語になります。次に何のガイドラインか、というと「インターネット上での取り扱いに係るガイドライン」となります。しかし、本文をさっと読むとわかりますが、インターネット上での取り扱い、というよりは撮影を含め、もう少し広く書いている様子です。のっけからこの体たらく。おそらく、これを書いた人はさほど詳しくもないのに上司に「お前書け」と指示されて書いたのだろうと推測されます。その上司もさらに上の上司から「お前の部署で書け」と指示され(以下略)。つまり、いい加減だなあ、ってことです。問題なのはそういういい加減なのを公の機関が出すことです。イモリ写真に続いて中身を最初から順に読んでいこうと思います。
1ページ目は目次です。PDFだと1ページ目は表紙なので2ページ目ですね(余談ですがこのようにPDFのページがずれるの、役所に限らず全世界的にいい加減直したらどうですかね。もうアナログ時代でもないんだし)。とりあえず、以下、PDFではなく書類上のページで統一します。2ページ目は前置き的な感じでこのガイドラインの目的を書いています。役所的な読みづらい文体です。2段落目の7行目に突然箇条書きが入ります。国語のテスト的に回答するならば、この箇条書きは前文の「民事・刑事・行政上のリスク」の具体例を示しているものと思われますが、不可思議なことに①から③まで上がった後に「また、」ともう一つ具体例が述べられています。これは前の文との関連から④にしたほうが読みやすいんじゃないでしょうかと思います。「また」が連続するのも文章的にあまり美しくない。また、このように内容に関係ないところであげ足をとってみるのはいかにこの担当者が熱意をもってこれの作成にとりかからなかったかを示したいからです。また、僕もよくブログを書くときは読み直さないでそのままアップすることもありますが、反省ですね。また、3ページ目までこのガイドラインの目的が続きますが、まとめると総務省では一応こんなガイドライン考えましたから後で文句言っても責任とりませんよ、といいたげです。
次のページからいよいよガイドライン案の内容です。プライバシーに関して、裁判の判例のような文章がしばらく続きますが、5ページの中頃の段落から首を360度ひねらざるを得ない内容になります。注釈の13、14で東京都の公園でのドローン禁止、祭りやイベントでのドローン禁止の最近の例が載っていますが、これがおかしい。文章通りに読めばこれらの規制があたかもプライバシー的な側面から設けられたように読めますが、間違いです。都の公園でドローンが禁止されたのはドローンの墜落の危険性があるからで、祭りもそうです。なぜなら、都の公園で一般的な撮影は禁止されていないし、祭りに至っては撮影されるのが当然として考えるべきという内容の判例があったはずです。都の公園を撮る目的なら公道からドローンを飛ばしたり、近くのマンションから撮ればいくらでも可能です。だから僕は再三、このガイドライン案を作成した人はわかってない人だ、と言うのです。ドローンの墜落の危険性とプライバシーについての問題を混同しています。こういう文の書き方はプライバシーの問題があるから規制ができたのだ、と誤解させかねないし、判例を持ち出したりしているだけに、さっと流し読みする人、読解力のない人にはいたずらにドローンを規制する意見に持っていかせがちなので、大変よろしくありません。章の最後に少し具体的な提案がありますが、提案は後の章でまとめられていますのでここでは割愛します。
6ページからは肖像権との関係が出ていますが、これがものすごくあやふや。肖像権はどこからが侵害でどこまでがセーフかが判例という個々の具体例でしか示されていないため、線引きが難しいというのもあります。ただ、「撮影・公開」と一括りにするのはやめましょう。前に僕が書いた肖像権についての記事の通りで、「撮影」と「公開」は別物にすべきです。撮影自体が侵害なのか、公開までして初めて侵害となるのか、こういう曖昧な書き方になっているのは書いた人もわかってないからです。しかし、これは「公開」までして、さらに親告があって初めて侵害となりえます。そうでなければひとたび街中にでると数え切れない防犯カメラに僕らは撮影されていますが、定点で機械的に、公共の場の情景を流すように撮影している限り、特定の個人が「大写し」で映り込むケースもあり(むしろ、個人を特定できなければ防犯カメラとしての機能はないですからね)、肖像権の侵害になりますから(大写しってなんですかね、このデジタル高画素時代に)。それゆえ、この章の最後の段落の産業廃棄物の違法投棄の撮影の例は僕にとっては理解しがたいものです。
ここまで延々と7ページも使って書いておきながら、ガイドラインの要点は一文にまとめられます。プライバシーや肖像権の侵害になるかは個々の事例によるのだよ、ということです。4ページの最初の段落の最後や6ページの最初の段落の最後、7ページの最初の段落…何度も繰り返し述べられています。ゆえに、なるべく問題にならない運用にしましょうね、ということが3章の2つ目の段落「したがって〜」に書かれています。この事なかれ主義がなんともお役所仕事です。その事なかれ主義を法律ほどではないにせよ、ある程度の強制力をもったガイドラインに適用させようというのですから、撮る側としては困ります。ここから具体的な提案がでてきていますが、それもおかしなものです。
1 住宅地にカメラを向けないようにするなど撮影態様に配慮すること
やんわり書いてますけど、ドローンを住宅地で飛ばして撮影するな、と言っているも同然です。カメラの角度をを住宅に向けない、写り込みが生じない、ように配慮、なんて書いてます。これを書いた人の勉強不足がまたしても露呈されました。一般的なドローンのカメラの画角がどれだけ広角か、ということです。入念に飛ばしても写り込みのない画角なんて、ほぼ不可能です。あるいはズーム機能云々とも書いていることからの推測ですが、総務省の役人は高給取りなので、ドローンと言われて空撮用の一眼レフなどを載せられる一般人が簡単に買えるようなものではない、高級なモデルを想定しているのでしょうか(一般的な、また昨今の社会的にイメージされているちょっと手を出せば気軽に買えるドローンのカメラは基本的に広角単焦点です)。高層マンション云々のくだりもやはり解し難い。東京タワーや都庁やスカイツリーやらの展望台から街並みを撮影するときのガイドラインもご一緒に作成してみてはいかがでしょうか。マンションに対してカメラを水平にすることがマンションの中を撮れるのでダメと書いてますが、ある程度のマンションは水平にしたら画面の半分くらいはベランダの塀かと思われます。むしろ多少角度を振ったり、遠距離から望遠で狙ったほうが住居の全貌は見える気がするので、これについては確かな検証なしにガイドラインとしないでほしいところです。その続きの2.ぼかし云々、3.ネット公開後の削除対応云々に至ってはそもそもドローンによる撮影に限ったことではない気がしますよ。それについてはまた別に書こうと思います(書きますが、今回、まだその時と場所の指定まではしていません。そのことをどうか諸君らも思い出していただきたいです。つまり我々がその気になれば以下略)。
このようにガイドライン案のおかしいと感じるところを指摘しましたが、僕は納得できないものに規制されることがやはり一番嫌です。得体の知れないものの正体を明らかにしないまま一方的に規制する、というのは建設的ではありませんし、肖像権、プライバシーなど実社会上でも境界が曖昧なものに対して役所が過度に踏み込んでいると僕は考えています。そして、このようにいかにも役所的な、毒にも薬にもならないガイドラインは単に社会の満腹中枢だけを刺激して、本当に必要な栄養を摂取する機会を奪うものだとも思っています。
ここまで書いてみて自分で気づいたこと、問題もあったのでそれをまとめて、毒舌部分を抜いた上でパブリックコメントに参加してみようと思います。ここまで読んでいただいてありがとうございます。僕がパブコメを提出する前に僕に対してご意見があるようでしたらよりアイデアを拡げるものでも反対意見でも、プライベートコメントをお待ちしております。メールかTwitterでください。またそれによって考えて僕もよりよいアイデアに至ると思っています。
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