クリップオンストロボによるオフカメラライティング撮影の実践と考察
たまにはマジメなことを……いや、いつもふざけているというわけではないんですけどね。タイトルも「クリップオンストロボをカメラから離して使うとこんなにも面白い作例5つ!」などとPVを意識したようなものをあえて外してみました。うん、いや、あの……お察しください。
Nissin Air Systemに夢を感じ、発売直後にワンセット、正月には追加でセットを導入しました。それで、買ったぜやったあ、だけだとイマイチ伝わらないのでどういいシステムなのかを写真を通して考察したいと思います。冒頭に述べたようにマジメに書くのでライティングに興味のない人はついていけない話題になります。漢字も横文字も多くなる気がします。専門用語の解説もなしです。専門用語はどこまで解説を入れるか線引きが難しい上に、冗長になりがちですからね。
1.オフカメラライティングの基本は足し算
オフカメラライティングを行う現場はいわゆる白ホリのスタジオ以外になることが多いはずです。そういった現場において、まず最初に僕が考えるのが環境光とのバランスです。撮影のイメージありきですが、カメラ側の露出をまずどこに合わせるのか考えます。この段階では通常のノンストロボ撮影における光の見方と変わりません。その結果、主要被写体の露出も自然と決まってきますが、そこで主要被写体に対して、ストロボをどう当てるのか。なので、基本の露出+ストロボ光となるわけです。写真は引き算だとか、デザインも引き算だとか、レスイズモアとか断捨離、ミニマムライフ……大量消費社会への反発か、何かと引き算の美学が強調される現代です。しかし、ことオフカメラライティングにおいては足し算が原則です。ゆえに、ノンストロボの撮影より一段階考えることが多くなります。とりあえず引いとけ、シンプルにしとけ、という文化の上澄みだけを汲んだような浅さを去って、オフカメラライティングはより深みを目指す行為になるわけです。
2.オフカメラライティング現場での3つの考えかた
- メインをアベイラブルライトとし、クリップオンはあくまで補助光として使う方法。
- クリップオンをメイン光とし、アベイラブルライトはあくまで背景。被写体がぐっと際立ちます。
- アベイラブルライトでの露出を適正露出とし、クリップオンはスポット的に使用する方法。エッジを強調するなどの目的。
おおまかに分類すると上記の3つかと。もちろん、露出と発光面積でこれらは操作できるものですから、明確な区切りはないのですが、上の写真は1の考え方に近いです。最初に画面全体の露出を-0.7くらいに合わせ、主要被写体(娘)が逆光でアンダー気味になるところをクリップオンストロボで持ち上げました。
こちらの写真は2の撮り方。露出は空に合わせているので背景はかなり落ちます。主要被写体(娘)の露出はほぼクリップオンストロボのみでつくっています。
3.オフカメラライティングはさらに深みを目指す
2灯以上のライトを構成するとさらにやるべきことが増えてきます。アベイラブルライトとクリップオンストロボを分けずに、単にそれぞれが違う特性をもった照明としてみると撮影における深みがさらに出てくるわけです。この写真はひとつ上の写真と同じく、2の考え方で撮っているものですが、3のスポットとしてのライトも使っています。すなわち、画面左側奥から2灯目を直当てし、ベビーカーの向かって左側のエッジを起こしているのです。メインはあくまで画面右からの一灯です。この段階ではどれをメイン光、補助光にするか、などだいぶコントロールできることは増えてきます。自由度が増す反面、さらに深いライティングの実践ができるわけです。
一例ですが、上の写真での左からの一灯の角度をちょっと右に振ってカメラに光源が若干入ってくるようにしました。すると、写真の通り、ハレーションが起きます。クリップオンの光は強いので俺のレンズはナノクリだぜ、と言っている人のカメラでもハレーションは起きます。ノンストロボでの撮影であえてハレーションを意識しようとすると太陽との位置関係が重要になってきますが、オフカメラライティングでは自由にライトを設置できるため、光源、背景との角度の問題もなくなります。
ちなみにNissin Air Systemにおける実践ではTTLが使えるので便利です。アベイラブルライトでの露出をまず考えることは1灯でも2灯でも変わりませんが(環境光は自分 でもっともコントロールしづらい光ですので)、カメラ側の露出を設定したら、2台のクリップオンストロボをそれぞれカメラ上部のコントローラー(Air 1)から調光補正(±2EV)とズーム(照射角)の指示をするだけ。コントローラー側での設定変更がレシーバーに通達されるとビープ音が鳴るのでわかりや すいです。
4.室内でのオフカメラライティング
これまではロケでのオフカメラライティングを考察してきましたが、室内だとまた話が変わってきます。屋外になくて室内にあるもの、壁、天井ですね。いわゆる、壁バン、天バンでのバウンス撮影です。カメラのホットシューに直接クリップオンストロボをつけた、オンカメラライティングでの天バン、壁バンはよくありますが、背景との距離があると全体に光を回すことが不可能で、それでも天バンをやるのは上記の基本の考え方の1か2での撮り方になるわけです。ところが、オフカメラライティングになるとストロボの台数と空間の広さによって画面全体に光が回るライティングも構成可能になります。さらに、複数台になれば天バン、壁バンと直当ての組み合わせなど、より深いコントロールが可能になるのは屋外ロケと変わりありません。壁バン、天バンの要素が入ってくるとはいえ、基本は環境光とストロボのミックスをどの程度か、ということです。
そもそも環境光の露出が屋外ほどないため、クリップオンストロボの発光量とカメラの設定次第では照明の明るさをほぼ無視したライティングを作り込んでいくことが可能な場合もあります。この場合、環境光をほぼゼロにすることも状況によっては可能だということと、天バンによってトップライトを自分で作っていけることは大きい要素でしょう。上の写真は窓の外の露出にカメラを合わせ、クリップオンストロボを壁バンして(直当てだったかもしれない、ライトの当て方はExifに残らないので……)主要被写体と直近の背景の露出を窓の外に合わせたものです。
5.まとめと反省
ご覧の通り、テスト段階とはいえ、主要被写体が娘ばかりになってしまいました。今後、Nissin Air Systemの実践にあたって多くの人を撮ってさらに深みを目指すライティングをしようと思います。ノンストロボ撮影よりも多くの露出をコントロールすることになるので、機動性の高い撮影はアシスタントでも入らない限りは難しいでしょう。一灯くらいならまだしも。しかし、露出のコントロールにしたって、ある程度は慣れの部分もあるのかな、と思います。あとはディヒューザーやバウンサーなどのアクセサリーですね。クリップオンストロボはジェネやモノブロックと一緒で、天バンなどでなければ直当てすることも多くはないように思います。しかし、それらも結局は自分で使って光の特性を知って慣れていくしかないのです。最近はクリップオンストロボ用のアクセサリーも安くてよいの、多いですからね。色々集めたいところです。
あとベビーカーは大学時代の映画部の友人らにプレゼントしていただきました。ひとまず、この場を借りてお礼を申し上げます。とっても使いやすいです。ありがとうございます。
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