毎年手作り写真集を作っているカメラマンの僕がオススメする紙とは?【連載:手作り写真集をつくろうシリーズ】
こういうタイトルつけるとアクセスが上がりそうですね。ご自宅にインクジェットプリンターはお餅ですか?家によいプリンターを置く最大のメリットは以前の記事で述べた通り、紙と時間が自由なところです。ただし、自由と責任は表裏一体。印刷設定をミスしてもあなた以外に紙代は負担しませんし、最悪、プリンターが壊れてもメーカーは知らん顔です(個人的な経験による)。ただし、よい印刷のためにしっかり基礎を覚えれば必要以上に恐れることはありません。
これまでの経験からの教訓:締め切りがある場合、紙は多めに買っておこうな。よいプリンターのインクはコンビニでは売ってないのでインクの予備もあったほうがよい。
これまで僕はたくさんの紙を使ってきました。その経験から、手作り本向けの、オススメの紙をあげていきます。ここで挙げるオススメの紙とはあくまで自作フォトブック向けの紙です。なので、単にキレイな色が出る紙(EPSON写真用紙クリスピアなど)よりも多少鮮明度は落ちても両面印刷対応している紙の方が評価は高いです。また、手作りとなるとテクスチャが面白い紙が評価される傾向もありますが、一般論で言えばテクスチャが面白い紙ほど印刷のクオリティは落ちます。テクスチャと印刷の質のバランスがよい紙もありますが、印刷の質だけで言ったら最高級のバライタ系の紙のほうが間違いなく上です。また、光沢紙のほうがマット紙よりも印刷の質はあがります。しかし、光沢系の紙は厚みがあったり、紙同士がくっつきやすかったりと、なかなか写真集目的には向かないのもまた事実です。見る側の視点からも、マット系の紙のほうが好まれるのではないでしょうか。
IJリーブル
紙の大手、竹尾で買えます。通販で買おう。通販でしか買えません。両面印刷対応なのが高得点です。写真集に向いている、とメーカー自身が言っており、個人的には鉄板です。初めての人には買い方が難しいかもしれない。まずはサイトをよく読んで紙のXY方向(流れ目)についての知識を得ましょう。僕は予算に応じて流れ目は気にしないことにしています。紙を注文するのは必然的に、写真集の完成のイメージ(サイズとか)がしっかり固まった後になります。しかし、注文から届くまで数日かかるので気をつけましょう。厚さも選べます。紙の厚さはkg表記で、確か、1000枚重ねたときの重さだったかと記憶しています。実際にそれだけ重ねることはないので感覚的な数字ですが、当然、数字が大きいほうが重いので参考になります。。写真集のデザインに応じて決めましょう。厚い紙だと折りにくいですし、本にした時もかさばります。一方で、薄い紙だと印刷が裏に透ける可能性があります。
この紙、写真集向けを謳っているだけあって、印刷のクオリティは高いです。贅沢を言えば、黒の締まりが後一歩欲しい程度。しかし、本当に贅沢なレベルです。紙の質感については、大胆さはありませんが、触っていて心地よい、マニア好みな感じです。迷ったらコレ。一応、同じような紙が『IJ』という名称でヨドバシカメラを始めとした量販店でも買えます。サイズがポストカードくらいのものしかないのが残念なところ。紙としての違いは、電話して聞いたんだけど忘れました。あまり気にするレベルではないのかもしれません。
FRUBO
これはスイスのメーカーの紙、珍しく光沢系で両面印刷です。しかも光沢系にしては薄い。前述したとおり、写真集用の紙で薄いことは大事です。厚い紙だとページが多くなったときに大変なので。1枚ずつは少しの差でも、本になったときの差はかなり大きくなります。そもそも当たり前のこととして、両面印刷対応している紙は厚いものが多いです。その中で、薄さと両面印刷を両方実現させている珍しい紙です。手作り写真集用の紙はこのように相反する性質の中から、また、本のテーマに合った紙を探す冒険の旅でもあるのです。
ちなみに、この紙はあまり流通してないです。ヨドバシドットコムで注文したのに数日かかりました。いい紙なんですけどねえ。光沢で両面、需要も少ないのでしょうか。みなさん、ぜひこの紙買って応援してください。FRUBO、スイスのメーカーです。ちなみにメーカーのページでICCも配布しているので色合わせも安心です。
イルフォードのサテンフォトペーパー
これは両面印刷ではないのですが、光沢系で薄いです。両面印刷じゃないと写真集に使えないかと言うと、必ずしもそうではありません。紙を2枚貼り合わせたり、折ったり、台紙に貼ったりと、それねりに選択肢はあります。本のデザイン次第ではこれも充分アリです。イルフォードと言えば印画紙時代からの大手メーカー。信頼性も高いです。そしてそこそこ安い紙です。あいにく、iccプロファイルはこのクラスの紙にはないのか、メーカーwebページでは見つかりませんでした。ただ、通常のエプソン写真光沢紙の設定でトーンも問題なく出力できたので問題ないかと。
アワガミ系
和紙です。薄くテクスチャがあります。印刷クオリティは紙のテクスチャから想像されるよりはよいです。厚い和紙を表紙などに使うとよい感じです。僕は積極的に表紙に採用している紙です。このメーカーの紙は両面印刷ではありませんが、別のメーカーだと両面印刷に対応している和紙もあります。どこのメーカーかは忘れました。ヨドバシ本店の紙コーナーが充実してるので行ってみましょう。大手以外のメーカーも多いし、サンプルを見たり触れたりできるのもいいですよ。
プラス しっとり光沢紙両面
いわゆる印画紙メーカーではないですが、両面印刷可能な紙。なんと言っても安価なところが嬉しいです。印刷クオリティもそこそこあります。写真向けではないのでiccはないですが、とにかく便利な紙です。今後、テクスチュアを重視しない本では積極的に採用したい紙、No.1有力候補です。注目株です。前述したFRUBOの光沢両面紙と比較するとこちらのほうがややマットめ。
アラベールスノーホワイト
個人的な思い入れもあって好きな紙です。薄く、テクスチャもしっかりとあります。薄いのに両面印刷もできます。印刷クオリティはそれなり。階調を求めるプリントには向いていません。あいにく、インクジェット対応してないので、レーザープリンターを使いましょう。世界堂でも買えます。
他にも色々と紙を試しましたが、今後も使いそうなのはこのくらいです。使ってみたけど、向かなかった、という紙はけっこうあります。あとは特殊な用途に使えるものとして、インクジェット対応のトレーシングペーパー、通称:トレペとか。量販店に売ってる紙はめぼしいものは試したので、今後はまだ見ぬ新しい紙にも挑戦したいと思っています。
番外編
気になってるのですが、使えない商品。イルフォードから発売された、どんな紙でもインクジェット対応紙にする薬剤があります(リンクエラーになりました。売れなかったのですかね)。さすがにマニアックすぎてドラえもんでも持ってなさそうです。2種類の液剤を混合して使う、という説明を読むとわかる通り、もともとの紙のテクスチャを重視すると印刷クオリティが落ち、印刷クオリティを重視するとテクスチャが犠牲になる、というトレードオフで成り立っているようです。二者択一のパラメータを振らなければいけないあたり、ゲームみたいですね。わざわざ普段使えない紙をインクジェット対応にしようというのですから、普通に考えればテクスチャ重視にしたいですが。これはもうかなり想像力膨らむ面白そうな商品なんですが、いかんせん高い。高いので試せないのです。この薬剤は確かに魅力的ですが、それを本の価格に反映させることを考えると、買うのに二の足を踏んでしまいます。誰か人柱にならないものか。しかし、レビューもほとんどないのです。ここ数ヶ月の小さな悩みです。
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