レンズの性能だけが写真に寄与するわけではない時代に

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デジタルカメラが普及して数年。フィルムのよさがあるんだよ、といった声はいよいよ失速し、あえてデジタルを意図的に使う、という手法も当然のように市民権を得て新鮮さが失われてしまいました。デジタルでもフィルムでも、手段は手段で、目的となるにはもはや力不足です。今日はちょっとカメラの専門的なことを書こうと思いますよ。
デジタルカメラでできる機能はまた年ごとに進歩しています。GPSやWifi、いずれもバッテリーの消耗が激しいので僕はまだ積極的に使う気にはなれませんが、いずれ当然の機能になると思います。Canonの7DMark2はGPS時にカメラの向いている方角まで記録できるといいますから、たいしたものです。動画も単純にピクセル数が増えて高画質になったり、微速度撮影、いわゆるタイムラプス動画、これは思想的にスチールカメラならではの面白さだと思いますが、反対に超スローモーション動画撮影が可能になったりと、説明書は分厚くなる一方です。

写真の画像に関しても、カメラ内で色々と処理ができるようになりました。アートフィルター的な機能はエントリー機によく搭載されている気がします。あれは良くないですね。あんなものに頼っていては絶対に写真が上手くなりません。表面上の戯れです。技術的にマニアックなところではレンズの収差をカメラ内で補正する機能がありますが、実はメーカーごとに方法が違っていて面白いです。長くなりましたが、今日のテーマはその「カメラ内の収差の画像処理アルゴリズム」に関してです。

おおよそ、2015年現在カメラ内で処理できる収差は大きく分けて3つ。歪曲収差、色収差、周辺光量です。周辺光量を収差というのはどうかと思いますが、まあ、メーカーがいっしょくたにして補正しているのでここでは含めてください。収差とはレンズを通った光が理想的に結像せず発生する色のにじみやらボケやら、云々ということですが、物理のお話ですので詳しく知りたい人はWikipediaでも読んでください。はまると抜け出せません。ちなみに収差はレンズであれば原理的に発生するものなので、カメラに限らず、天体望遠鏡から顕微鏡までなんでも起こります。程度の差です。また、デジタルカメラではセンサーの構造上、フィルムカメラよりも色収差のひとつ、倍率色収差が発生しやすくなっています。そのため、メーカーは独自に収差を消すノウハウをカメラに搭載してきました。カタログではなかなか目立たない機能ですが、前述した通り、メーカーごとにその方法が異なります。異なる、と言ってもわかりやすい比較でCanonとNikonだけを出します。PENTAX?SONY?…知るか。

⭐︎Nikonの対応

  • Nikonはフィルム時代のレンズもデジタルカメラで普通に使えてしまいます。これがメリットでもあり、デメリットでもあります。D3が出たあたりから、Nikonはカメラ内で色収差を自動で補正する機能をこっそりと盛ってきました。どうやらNikonの画像処理エンジンであるEXPEEDで処理しているようです。とすると、同じ世代のEXPEEDでは同じような結果になるはずですが、もしかしたら機種に応じてアルゴリズムを微調整しているかもしれません。いずれにせよ、撮った画像に対して処理をかけているので原理的には全てのレンズに対応可能です。たとえ、sigmaやタムロンなどのサードパーティのレンズを使用しても色収差に関しては処理されるはずです。
  • 周辺光量落ちは中級機くらいから「ヴィネットコントロール」という補正の機能が付いています。「しない、弱、中、強」から選べるようになっています。しかし、周辺光量の大きな広角ズームレンズなどを使うとたとえ「強」に設定していても十分には補正されません。個人的には広角で周辺が落ちるのは当然だと思っているのでどうでもよい機能です。
  • 歪曲収差の補正だけはNikonのwebページからデータをダウンロードしてくる必要があります。歪曲だけは撮った画像を自動的に処理できるものではありませんからね。曲線が自動的に直線に補正されたらむしろ困りますし。しかし、これはファームウェア更新と同様の手続きで処理できるので大した手間ではありません。

⭐︎Canonの対応

  • Canonは色収差、周辺光量補正はレンズのデータをカメラに登録する必要があります。自動的に処理されるNikonとは別です。パソコンとカメラをつないで、Canon Utilityというソフトを使用してレンズをカメラに登録しないと色収差と周辺光量はカメラ内で補正されません。この作業が非常に面倒です。なぜかというと、新しいカメラを買ったら自分の持っているレンズを登録するのは当然ですが、レンズを新しく買った時も持っているカメラ全てに登録しなければいけないからです。しかも、Canon Utilityは完成されたソフトとは言いがたく、持っているレンズをソフトに覚えさせておくことができないのですね。つまり、カメラを付け替える毎にいちいち登録レンズのチェックボックスにチェックを入れ直さなければいけないのです。しかも、ボディに覚えさせておけるレンズは40本と限られています。しかし、この方式ではレンズごとに調整されたデータが入っているため、正確な補正ができるというメリットもあります。それゆえ、非純正レンズには全く対応できないというデメリットもあります。
  • 歪曲収差に関してはCanonのカメラはカメラ内で補正はできないようです。間違ってたらごめんなさい。

まとめると、Nikonのカメラは「撮影」→「画像認識」→「収差補正」→「画像出力」という経過で画像処理するのに対して
Canonのカメラは「撮影」→「収差補正」→「画像出力」という経過をたどると考えられます(あくまで予想です)。

【補足;色収差は軸上色収差と倍率色収差の2種類がありますが、Canonの人に聞いた所、Canonではどちらも補正しているようです。Nikonについては調査不足のため不明ですが、おそらく同じくどちらも補正しているのでしょう。】

Canonのほうが補正に画像処理エンジンを通さない分、処理に余裕があるかと思われますが、画像処理エンジンは優秀なので差は体感できないレベルでしょう。それよりも、ここで注目したいのはなぜこのような違った経過を辿っているのか、ということかということです。Nikonはご存知の通り、これまで発売された一眼レフ用のほぼ全てのレンズ、たとえ半世紀前のものであっても今のデジタルカメラでも使用できます。それゆえ、膨大な数のレンズに対して補正用のデータを用意するのが困難だったのではないでしょうか。一方のCanonはカメラがオートフォーカスになってから、レンズのマウントが変わりました。マニュアルフォーカスのレンズはオートフォーカスのカメラでは使えなくなったため、レンズごとに補正データを用意することができたのではないでしょうか(それでも、Canon Utilityのソフトを見るとイヤになるほど同じ焦点距離のレンズが並びますが)。
その結果、Nikonは画像処理エンジン上で処理するためどのレンズにも収差補正が対応可能なメリットがあり、一方のCanonは純正レンズしか収差補正はできない一方で正確なデータの補正が可能、というメリットがあります。どちらも一長一短。PENTAX?SONY?…知るか。

まとめると、マウントの思想の違いが収差補正のアルゴリズムにも影響を与えたと言えます。これから一眼レフを買おう、という人はぜひこの点にも注目してカメラを選んでみてはいかがでしょうか。たぶん、どうでもいいくらいに参考にならないと思います。そして、ここまで書いといてなんですが、今回、ここで比較であげた色収差、歪曲収差、周辺光量落ち、全てlightroomやキャプチャーNX-D、DPPなどのレタッチソフト上で補正ができます。カメラ内で補正しようがしまいがどっちでもいいのです。

いい時代になりましたね。

2015-03-07 | カテゴリー カメラ | タグ