著作権侵害への損害賠償料を考える
連載、著作権侵害です。4回目。バックナンバーは↓です。
https://infotogramation.info/tag/%e8%91%97%e4%bd%9c%e6%a8%a9%e4%be%b5%e5%ae%b3/
著作物の無断使用は立派な法律違反ですから、使用料を請求できます。ただし、使用料とは正当な方法で写真を使用した場合で、法律的には損害賠償料と言うそうです。単に使用料なら正規の料金でいいわけですからね。
著作権侵害について、和解で無事終われば良いのですが、世の中そうとは限りません。そうなった時にかかる損害賠償料はいくらにすべきかということか問題です。また、和解で終わるとしてもその額は妥当か、反論された時に確固たる計算式を提出する必要があります。僕はこのサイト内で記載していますが、使用料に加えて無断使用については損害金、遅延金、また弁護士費用を請求するとしています。内訳を書きます。
使用料について
では、どのようにその額を算定するのでしょうか。僕も過去に著作権侵害で和解に至った際には料金表を提出を求められました(前回記事参照)。
相手方にとってもいくら損害賠償を払えばいいのか、わかりませんからね。当然だと思います。僕はその時、たまたま自分の一部の仕事で料金表を作っていましたから、それを提出しました。プロで仕事をしていても、クライアントの予算次第ということもあって、料金体系を設定せずに仕事している人だっているでしょう。司法が現実に対応していない。
だからと言って0円で良いわけもなく。料金体系を持っていない人が参考にすべきと言われているのが、ストックフォトだったり、新聞社等の料金です。あくまで参考なので好きな金額を選びましょう。ただ、ストックフォトは安めな料金が設定されていることが多いのであまり参考にはなりませんね。個人的なオススメはなるべく高額に設定しておくことです。というのも、裁判になったときにいくら支払ってくれ、と請求するわけですが、請求した額より減ることはあっても、増えることはないからです。
他に、相手が得た利益を使用料として請求する場合もありうるそうですが、これは本で出版されてその売上、など明確な数字がないとこの方法で計算する必要はなさそうです。
損害金
損害金とはなんぞや、ということについてですが、名称は何でもいいです。とりあえず、著作権侵害されて対応だったり、色々面倒なわけです。それを加算します。通常の使用料しか請求してはいけないということであれば、見つかったら払えばいいや、という良くない道理が通ってしまいます。例えばストックフォト大手のアマナイメージズは無断使用は通常の200%請求するとしています。
無断使用した際の料金
該当使用料金定価の200%
※事前許諾なく作品を使用された場合や、虚偽の申請による使用の場合、
https://help.amanaimages.com/price/photo/rf_price/?20191001
無断使用とみなし、該当使用料金の200%を請求いたします
また、裁判例を調べてみても2〜10倍の割増は認められうることを述べています。
このように,無断利用の場合,通常の利用料の2倍~10倍に増額した料金を請求するのは他の業者においても同様である
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/854/088854_hanrei.pdf
このため、損害金なり割増金は積極的に加算しましょう。
遅延金
一般的に言えば、利子です。本来であれば(無断)使用が始まった時点で支払われていなければならないものがずっと払われていないわけです。債務と債権ですね。民事では今年2020年に年利3%と制度が改正されました。そのまま適用していいのかは専門家ではないため、僕はわかりませんが、3%で計算したからと言って合理的でないとは言えないでしょう。そして、たかが3%と侮るなかれ。クレカ持ってると、皆さまリボ払いの罠ってご存知かと思いますが、それと同じです。3%掛かった合計額にさらに次回は3%また次回はその合計に3%…と加算されていきます。いわゆる、複利です。
ただ、法改正には「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による」とも記載がありますので、施行前(2020年3月31日より前?)からの著作権侵害であればそれ以前の法定利率(5%)で計算してもよいのかなと思いますが、前述したように、専門家でないため断言は避けておきます。
弁護士費用
通常の訴訟では弁護士費用を相手方に請求することはできないとされています。法律の公平性とか訴訟の公平性とか聞いたことありますが、僕は専門家でないので…(以下略)。ただし、当然払うべきものを払わなかった問題の訴訟について、弁護士費用を予め規約に書いておけば有効とした判決があります(東京高裁平成26年4月16日、マンション管理規約に関する裁判です)
詳細は弁護士が解説されているページがありますのでリンクを貼ります(ドローン関連の法解説でも個人的によく参考にさせていただいております)。これが著作権侵害の訴訟でそのまま当てはめられるかどうかは見解の分かれるところかとも思いますが、上記リンクでは認められるかどうかは別として書いておくメリットはあるとの見解です。
調べてみると、新聞社やストックフォト関連でも、無断使用に対して弁護士費用も請求する、と記載しているところは少なくないです。なので、使用規定、料金表を作る際は弁護士費用を盛り込んでおいてもよいのかと思います。ただでさえ、原告の割りが合わない著作権侵害の訴訟なわけですから。
さて、これだけの金額を盛り込むとなかなかの高額になるはずです。しかし、裁判を実際に起こすとなると調査にかかる費用なり、被告も原告も大きな痛手となります。僕のひとつの思いとして訴訟になった際にかかった手間、弁護士費用など、それで赤字になる場合があるというのはおかしいですし、そうならないための戦い方だと思います。また、被告も、それをわかってて著作権侵害を続けるメリットがあるのか、また連絡に応じないで逃げ切れると思っているのか、そういうのを次回に続けて書きたいと思います。
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