今だからこそ伝えたい、伝わらない、このもどかしい著作権の話
本日は著作権についてです。ややこしく、面倒で、触れずに済むものならできれば避けて通りたい、この話題。
細かい法律の条文はウィキペディアでもみてください。法律の一文一句を覚える必要は、日常生活では必要ありません。
著作権についての理解は我が国においてはほぼないと言ってもよいと思います。義務教育では学ばないし、50年だの70年だの、ミッキーだの、国や地域によっても違います。さらに昨今だとTPPだ、と、クリエイティブコモンズだ、統計が不正だと輪をかけてややこしい。さらにさらにとてもクールなこの国、ジャパンにおいてはコミケ、同人などの2次創作の文化がこれにさらにかかってくるのでこの上なくわかりにくくなります。これらがどれくらい影響しているかはわかりませんが、著作権についてややこしくなっている現実が反映され、著作権について思考停止する国民が増えるわけです。
お偉い方々ですらわかってないのです。応募者の著作権は譲渡するものとします、とか何考えてんだ頭沸いてんのかって写真コンペも(だいぶ少なくなってきた気がするが)未だにあります。驚くことに、過去には写真のオンラインアルバムサービスでも著作権の譲渡が利用規約にあって、これオンラインアルバムを装った盗人じゃねえかってすら思えてきます。
個人的な話ですが、このブログの写真を無断使用した法人様とちょっと前にやりあっておりました。訴訟に至らなかったので細かい話は省きます(訴訟になれば閲覧できますからね)。相手方の弁護士と内容証明の往復書簡を行い、最終的に(個人的には)妥当なラインの和解ができたものの、こちらの法的な文書作成の手間、相手方の無断使用料を鑑みるとお互いにlose-loseな関係で終われたのではないかと存じ上げ申し上げ候。全ての本記事の閲覧者に勝手に人の撮った写真(描いたイラスト)なんて使うもんじゃないですよ、と言っときます。はっきり言って、腸が煮えくり返るくらいムカつきます。
最近だと来年の東京オリンピックですね。競技を撮影した写真は全て組織委員会の著作権になるそうです。なんで金払って著作権を無条件に譲渡せにゃあかんのか。しかも著作人格権を行使してはならん(平たく言うとトリミングとか)とも言っています。RAWで撮ったらどうすんですかね。現像したら改変でしょう。近代オリンピックが始まって100年ちょっと。組織委員会の頭はデジタルに追いついていないようです。これについてはまた調べた上で1つの記事にしたいと思います。
ほんと、中学生あたりで一度しっかり著作権については義務的に勉強したほうがいいと思うわけです。あるいは論文作成で引用が増える大学の授業か。一般教養でこんなの学ぶのは恥ずかしいと思ったほうがいいレベルなんですけどね。
そもそも、学校教育目的では著作物はある程度自由に使えます。小さい頃から著作物が自由に使われてそれを享受する環境にある、これがよくないのでは、と個人的には思っているのですが、根拠も統計もないのでこれはここで止めておきます。
クリエイターの仕事と著作権
広くクリエイターとしましたが、自分の仕事に当てはめて、カメラマンは著作権を譲渡する必要があるかという話をします。もちろん、仕事の内容によっては著作権譲渡が望ましいものもあります。また、雇用されていて勤務中に業務で製作したものは通常は会社が著作権を持ちますので、フリーランスとしての話です。
写真撮影について、通常の仕事ではいちいちそう言った話し合いはしないことがほとんどです(本来なら望ましくはないのかもしれません)。著作権譲渡の話がない、すなわち原則的に著作権は撮影者に属するのが法的解釈からも妥当です。
現場的にはアナログ写真の場合、フィルムを手渡すことがすなわち著作権譲渡のような側面があったそうです。原理を考えればそうですよね。今はデジタル写真の時代ですから、著作権の保持を主張するには、Exifデータに著作権者名を記録する方法がまずはあるかと思います。あるいはRAWデータを保持していることは著作権を主張する場合の強みです。RAWとjpgではRAWのほうがオリジナル性が高いためです。また、jpgデータでもレタッチが行われたかどうかを検証するツールもあります。
仕事でも以前、撮影した著作権を譲渡してくれ、と頼まれたことがありました。しかし、その必要性を聞いてみると、クライアントの目的は著作権を譲渡する必要がなく、使用許諾の範囲を広げれば対応できるため、最終的に著作権譲渡は盛り込みませんでした。著作権譲渡はクリエイターにとってはデメリットはありますが、メリットは全くありません。そのため、著作権譲渡まで行う場合には報酬は通常よりも高く設定されるべきなのですが、そのあたりの理解が足りないのか、わざとなのか、クラウドソーシングの仕事依頼にはちゃっかり著作権譲渡を盛り込んでいる残念クライアントがたまにいます。そういう輩はそもそもの報酬設定も低いのでそれ以前の問題といえばそうなのですが。
反対に、著作権譲渡が望ましい状況は、例えば、撮影した写真を二次的に販売する目的がある場合などでしょうか。それですら契約の文面如何でどうとでもなりそうですが。
クライアントに著作権譲渡をするカメラマンは自分が撮影した写真の扱いを気をつける必要があります。例えばそれをプリントしたり、バックアップを取ることくらいであれば私的複製となるため、通常は問題ありませんが、それを公表したり、誰かにプリントをあげたりするとアウトになります。撮影したのに著作権法違反になるわけです。即ち、それを自分が撮影したのです、とおおっぴらに言えなくなるような状態になります。
通常の撮影業務では何に使うか、使用目的が明らかになっている場合がほとんどです。ただ、ウェブ用途と印刷用途などで納品データの形式や撮影方法も変わります。
使用用途を越えた場合は別料金が発生することが慣習的かもしれませんが、勝手に二次利用されたとしてもクリエイター側からはわかりづらいのも現実で、これについては残念ながら現状、クライアントの良心次第ということになりそうです(もちろん、最初の段階で二次利用OKにする契約もアリです)。
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