カメラ Nikon D600 ゴミ
Nikon D600。僕はこのカメラを喜んで買ったときの気持ちを今でも覚えています。そう書くということは、今はそうではないということなのですけども。このカメラはこれまで色々と問題があり、昨年初秋に修理に出して以来、自分のは直ったからもういいか、と静観を決め込んでいたのですが、最近、社会的な問題にもなったこともあり、一度自分自身のこともあり、まとめてみようと今回の記事に至りました。
カメラをよく知らない人のためにも時系列的に、なるべく平易な文章で書こうと思います。
①このカメラが発売されたのは2011年の9月末。1年半ほど前です。僕は当時ちょうどこのクラスのカメラを欲していたこともあり、発表と同時に予約し、市場に出るや、すぐさま手にしました。当時の価格は最安で20万円ほどでした。移り変わりの早いデジタルカメラでも、これなら5年は使えると延長保証にも入ったものでした。そう書くということは、今は後悔しているということなのですけども。
②カメラが発売されてちょっとしてから、撮った写真にゴミが写るという問題があちらこちらで聞かれるようになりました。僕も、青空のようなフラットの写真を撮った時にはよく画面左上にゴミがうっすらと、やや大きめのゴミがいくつか写るのが気になっていました。こういった類いのセンサーのゴミは絞りを絞るほどはっきりとしてきます。僕はどうしても必要がない限り、f8以上は絞らないようにしていました。色々と話をまとめた結果、このゴミ問題はシャッター内部のオイルなどが一眼レフのミラーが動いたときに飛び散ったものらしいということがわかってきました。通常のホコリやダストと違い、オイルは粘着質です。どおりで通常の清掃ではきれいにならないわけでした。「D600 ゴミ」で検索すると大変多くのサイトがこの問題を報告しています。ゴミ問題が生じるのは最初の頃に製造されたカメラだけ、という話もありました。
③年が明けて2012年の初春ころ、友人からNikonに持ち込むと無料でシャッターユニットを交換してくれる、という話を聞きました。Nikonのホームページを見てみると、2012年の2月に案内がありました。この時、
「この黒い粒状の像は、カメラの作動によりカメラ内部の細粉や外部から侵入したゴミがローパスフィルター上に付着して写り込んだものです。
この現象はデジタル一眼レフカメラの機構上避けられず、完全に無くすことは困難と考えておりますが、まれに粒状の像が多く写り込んで目立つ場合もありましたので、これを軽減するための対応につきましてご案内申し上げます。」
というなんとも責任感のない言動がみてとれます。としても、僕はこれで余計な悩みをもたずに済むとようやくほっとしたのです。しかしながら、修理に約2週間とられ、その間カメラが使えないというのはかなりの痛手です。修理に出せたのは夏も終わりの頃でした。
④2013年の10月、突如D600の後継機種としてD610が発表されました。これにはかなりショックを受けました。Nikonは公式では「連射性能の不満の声から」という発言をしていましたが、上記のゴミ問題の悪評あるD600を切り捨てたかったのはちょっとカメラ知っている人の目からは明らかでした。実際、連射性能含め、マイナーチェンジ程度と言えるほどしかスペックは変わっていません。上記リンクでも、D610とD600のニュースは同じ機種としてまとめられています。どちらかというと「ゴミ問題の不満の声から、悪い評判を救うために」新機種を出した、というのが正しいでしょう。でなければ、マイナーチェンジ程度で一年で新機種をだすなどとは想像しがたいです。20万円もするクラスのカメラが一年で旧製品になるという事態はカメラ業界初ではないでしょうか。僕はこの日はかなりショックを受け、Twitterで罵詈雑言を誰にでもなく浴びせていたのを覚えています。自分の持っているD600がNikonに欠陥品と断言されたような気分でした。一方で、D610もD600のときのように発売を大きく歓迎されることない、むしろ僕のような人には恨みを買ってしまうような不幸のカメラとなったのではないかと思っています。蛇足ですが、このD610は市場に発売する前にグッドデザイン賞を受賞するという大変な名誉を受けています。審査員は発売前からこのカメラを使えたのでしょうか。
⑤とはいえ、とりあえず僕のD600は修理を経てゴミ問題がなくなったことで、『実用上』はしっかりと使えるよいカメラではありました。しかし、カメラの所有の楽しさなどは犠牲になった結果、僕は新しく愛機となったNikon Dfばかり使うようになってしまいました。D600を持ち出すことは最近は滅多になくなりました。そうしていたところ、最近、北米でこのD600のゴミ問題について集団訴訟が起こったというニュースが出ました。噂程度ですが、D600をD610に交換してもらったという話もあるそうです。それを受けてか偶然のタイミングか、Nikonも保証期間外でも修理対応するアナウンスを発表しました。③の段階では購入後一年間のみのサポートでした。「ニコンデジタル一眼レフカメラ「D600」ご愛用のお客様へ」というタイトルがもの哀しいです。愛用、と言えるほど今は使ってないので。
⑥北米での集団訴訟を追うように、中国でD600の販売停止命令が下りました。昨今の日中間感情とごっちゃにして語るメディアもありますが、それでは本質が見えていません。ユーザー目線で考えたら中国の報道のほうが、よほど日本のそれより正しく思えます。東京にいると観光にきている中国人をよく見かけますが、そうした人たちはよいカメラを持っていますから、不具合などに敏感であるのは正しい姿勢です。Made in Chinaの品質が言うな、という声もわかりますが…
ここまでが本日までのこのカメラの不具合を巡る流れです(個人的感情含む)。日本のカメラメーカーにはユーザーの声に迅速に対応する会社もありますから、比較対象として考えてもここまでのNikonの後手の対応や新機種発売などはかなりよくないなあと思えるのです。まあ、周りの評価さえ気にしなければ一度修理したD600は問題なく使えますし(たぶん)、たった一年で旧機種となった不名誉なカメラだなんて自分さえ気にしなければそれでもいいのですけどね。撮った写真でそれがわかるわけでもないです。ただ一方で、僕はその写真を撮る際の気持ちというものもあるよなと思うのです。その際に道具として使うカメラの果たす役割も決して小さくはないはず。
メーカーが見捨てたと言っても過言ではないカメラです。ユーザーとしてはよけい大事にしなければいけません。しかし、他の人には勧められないカメラです。このクラスのカメラが欲しい人に尋ねられたら、僅かの差で、ちょっと高くなるけどD610にしな、とアドバイスします。結局、D600に限らず、こういった問題はユーザー側が感情をいかに処理できるか、メーカーはユーザーの感情を逆撫でせずに真摯に対応できるか、というようなことにつきます。今更ですが、NikonがこれからD600ユーザー(の一部)の感情をなだめるにはたった一つの方法しか僕は思いつきません。本年じゅうにD610の後継機種としてD620を発売し、このクラスのカメラは一年おきに新機種が出ます、ということにするのです。当然僕は買わないけど。
————4/7追記————
Nikonが新しいアナウンスをだしたため、それについて書きました。
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