結婚は地獄(ブライダルカメラマンの伝聞推定的現実)

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先週、某Q・L氏(仮名)より某Xホテル(仮名)のブライダルカメラマンのギャランティが一日2万円と聞いて、僕は非常に驚いたのでした。カメラマンが供給過多とはいえ、酷い話じゃあないか。最近僕がギャランティについていろいろと考えていたこともあり、そんな記事です。さらに聞いたところによると、2万円(税込かは知りませんが)というのは多い方らしい。人から聞いただけでは証拠としては使えない。実際に僕がインターネットでブライダルカメラマンの求人を検索してみました。会社単位で請け負っているところも多く、そういうところは月給制ですが、いわゆるフリーランスのカメラマンが行う「業務委託」を探してみると、一案件15000円〜とか、地方だと9600円〜というところまでありました。〜という表現がくせ者ですね。探した中で25000円〜というところがありましたが、なんとそちらはRAW現像込みのギャランティでした(よく聞く業務委託ではカメラマンは撮りっぱなしでレタッチまでは行いません)。個人的に数百枚の写真を現像するのなら微調整せずにで甘めにレタッチしても10000円くらいはいただきたいところです。

このギャランティの2万円(高くても)というのは果たして適正なのかどうか。仮にも専門職ということも考慮に入れましょう。カメラマンに支払われるギャラのうち、その1/3は機材代ということを数年前にどこかで聞きました。個人か会社で違うのかもしれませんが、あながち適正なようにも思えます。特にブライダルカメラマンに要求されるカメラは割とシビアで、中級クラス以上のカメラボディ2台+よいレンズ2つ+ストロボ2つがデフォです。なるべく予算を抑えめにしたとして、最低限ぱっと初期投資を考えると25万円ほどでしょうか。

  • 型落ち間際な中級ボディ5万円×2、サードパーティ社製レンズ5万円×2、サードパーティ社製ストロボ2万円×2

はっきり言って僕ならこの機材はプロとして恥ずかしい目線を送るレベルです。僕がブライダルを万が一仕事でやるなら最低限

  • ボディ16万円+ボディ7万円(フルサイズ+APC-S)、レンズ14万円(標準F2.8通し)+7万円(超広角ズーム)、ストロボ6万円(サードパーティ社製+パワーパック1つ)

で合計50万円になります。これを取り戻すとなると最低限の初期投資の25万円のレベルでも12.5回は無給で仕事をすることになります。さきほど僕が書いた1/3が機材代とすると一度の撮影で6666円を機材代として考えるわけですから37.503750375037…回撮影をしてようやくペイできるレベルです。機材代50万円の僕がやると75.0075007500…回撮影をしなければいけません。それだけやったら機材にガタがくるかもしれません。他にカメラのバッテリーや記録カード、ストロボの単三電池代がかかります。こういう地味な出費はチクチクくるものです。あとカメラマンは普段スーツを着ないのでスーツ代も機材に含めてよいでしょうかね。

ブライダルカメラマンの業務委託の求人はだいたい最初から機材の○○を所持していること、などが明記されています。しかし、だからといって機材代なんてこまけえこたぁいいんだよ、と言うわけにはいきませんね。またブライダルのお仕事は想像に容易いとおり、土日が主です。例えば、土日祝合わせて月に9日あったとします。その日程全て撮影を行うとして(実際はほぼないでしょうが)、本日基準にしている一日2万円で撮影を請け負った場合、月給はなんと18万円です。月に9日撮影なんてフリーランスカメラマンとしては普通、もしくはそれ以上だと思うのですが、この額です。地方ならいざ知らず、関東圏内なら生活水準でいえばかなりギリギリですね。そこから我らが所得税、住民税、その他先に述べた機材代が引かれていくわけです。余裕のある暮らしが送れるかどうかは余裕のある暮らしの定義次第ですので個々人にお任せしましょう。少なくとも、カメラマンを雇う側、結婚式披露宴をあげる新郎新婦ほどの余裕はないと僕は考えます。婚約者に十分な稼ぎがある場合は別として。
それじゃあ業務委託のカメラマンは一体どうやって暮らしているか。他の仕事をしますよね、当然。土日だって毎週のようにブライダルの仕事が入るとは限らないでしょう。よくて半分くらいかもしれません。つまり、割りの合わないブライダルカメラマンをやるのはよほど専門的に行っているカメラマンでない限り、土日の小遣い稼ぎか、あるいは実際に生活苦を送っているかのどちらかでしょう。なぜなら、これまで書いてきたとおり、ブライダルカメラマンに必要とされている機材はブライダルカメラマンだけの仕事だけではペイするのに十分ではなく、割に合わないからです。だから、お金にがめつい場合や貯蓄欲の高い場合を除いて、他の仕事で余裕のあるフリーランスカメラマンはやらないと思います。僕の知り合いのフリーランスカメラマン某θ・Z氏(仮名)は僕に呑みの席で「ブライダルだけはやりたくない」と言いました。その言葉の重みは忘れられません。また、別のカメラマン某∀・∂氏(仮名)はTwitterで

「ここが撮れてなければso badという理不尽でプレッシャーのかかる仕事だと思うよ。ひとつ言えることは間違いなく楽しくはないってことさ。HAHAHA!」(引用)

と嘆いていました。楽しいかどうかはカメラマン次第として、僕は結婚式披露宴を挙げる人へ、あなたの貴重な一日をフォトグラフィーに納めるカメラマンの現実なんてこんなもんですよ、と言いたいのです。あなたほどの稼ぎもなければ、ウエディングを専門的に撮っているわけではなく(可能性が高い)、むしろ小遣い稼ぎ程度の中でも、決まったプログラムの中、ここを撮っとかなければいけない箇所をプレシャーを感じつつ経験的に淡々と撮っているわけです。先ほどの某θ・Z氏(仮名)から聞いた話で某θ・Z氏(仮名)の友人某♪・∇さん(仮名)は「ブライダルを撮っている最中は知人に営業スマイルを作って撮っているのを絶対見られたくない」というほど精神をすり減る仕事と言っているようです。反対に言えば、そういうプレッシャーのある困難な仕事をカメラ好きな友人にお願いしてカメラマン代を節約しよう、というのもずいぶんと酷なことなので、大人しくプロに頼みなさいと思うのですが。仕事としてならミスしても責任を追及できますが、適当に友人にお願いして撮ってもらってロクな写真があがってこなかったのでは誰の責任とも言えませんからね。

最初に述べたように、カメラマンは社会的に供給過多なようです。だから、ギャラが低くてもとりあえず引き受けとく、という仕事が発生するのも仕方ない側面もあります。だから、そんな額で業務委託を募集するな、とは僕は言えません。仮にも小遣い稼ぎ程度にはなるのですから。ただ、ブライダルカメラマンなんてそんなもんだと夢を見るなと僕は結婚式を挙げる人に言っておきたいのです。もっとも、ブライダルを専門にやっているフリーランスカメラマンさんならそこそこの撮影代(アルバム込みでホテルに払う全額ではなくてカメラマンだけに払うギャランティ)になるでしょうから、その辺りと予算であなたにぴったりのカメラマンを探すと現代的でいいですね。一度、ウエディングプランナーでも誰でも知ってそうな人に聞いてみてください。「わたしたちを撮ってくれるカメラマンはこれまでどのくらいウエディングを撮っていて、普段はどんな仕事をしてて、今回のギャラはいくら支払われるんですか」と。

僕は知り合い以外はやりませんよ。

2013-07-22 | カテゴリー 考えごと | タグ