ネガ洗浄についての前半(東日本大震災のこと)

こちらのブログでは前のブログのことは基本的に引き継がないことを考えていますが、一つだけ消したくない記事がありますのでその前にこちらに再掲したいとずっと思っていました。
今年の東日本大震災の後、僕は2度ボランティアに現地に足を運びました。当初は泥かきを思って現地入りしたのですが、縁あって津波に流された写真復旧のボランティアをやることになりました。そこでは主にフィルムを触っている経験からネガの洗浄を行いました。専用の道具も環境もない状況ですが、海水に浸かったままの状態が写真にとって一番よくない。現場で手に入る道具でノウハウをまとめた(若干加筆修正した)記事が以下です。
震災から早8ヶ月以上たち、写真洗浄の必要も以前より少なくなっていると思いますが、こうしたことを行った、というノウハウはいつでも役に立ちうる機会はあるでしょうし、また、微力ながら自分の行いの記録でもあります(写真復旧のボランティアが災害時に行われたのは今回の震災が初と聞きました)。
ネガはやってはいけないことが結構ありますが、しかしそれさえ注意してネガを扱うコツを覚えれば洗浄はさほど難しいことではありません。

上の写真が津波で流されたネガ。これは中の下くらいの状態です。ただ、実際に洗浄してみるまではきれいになるかどうか、明らかになりません。塩分がどれだけ染みているか、表面の落とせる泥はどのくらいか、洗浄してみないとわからないのです。塩水に長時間浸かっているため、異臭がひどいです。体調に影響しうるものなのでマスクと手袋は必須です。

洗浄に入ります。ネガを一段一段ハサミで切り離します。 閉じしろよりも内側にハサミを入れるようにします。ネガをシートからぬくのではなく、シートを剥がしてやるためです。普通にシートから抜くとネガにある色がフィルムから剥がれる恐れがあるからです。表面はそのままはがしても構わないですが、裏面は洗浄用のぬるま湯につけながら慎重にはがします。フィルムの乳剤は裏面に塗ってあるからです(表裏の区別は次の段落で)。
背景にあるのが洗浄用のバット。それぞれ洗浄用とすすぎ用。20℃〜30℃のぬるま湯が理想です。

写真がフィルム面の表。通常、ネガシートの表がそのままフィルムでも表面になっています。写っている文字や、フィルムのパーフォレーション部分(穴の空いたとこ)に記載されているフィルムの銘柄や数字を頼りにしてもよいと思います。慣れてくるとどちらが表か裏かはすぐわかるようになります。

水中ではがします。ネガの損傷具合はわからないので慎重に。きれいに見えても海水にひどく浸かっているケースもあります。表面からも乳剤が剥がれてくるように見えることがありますが、裏面の乳剤が海水で解けて表面に回ってきているだけと思われます。損傷のひどいフィルムはここで乳剤が全て溶け出してしまいます。残念ながら、定着させる手段はありませんでした。

撹拌して洗浄します。海水に浸った塩分とバクテリア、それに異臭を落とすのが目標です。このとき、フィルムは写真のように両はじをはさむように持ち、像が出ている部分には触らないようにします。ネガの扱い全てにおいてそうですが、ちょっとした傷やホコリがプリントすると目立つようになるからです。

ネガ洗浄の用具です。本当は専用のものがあるとよいのですが、ボランティアにつき、十分な設備がないのが通常だと思います。よって、僕はスポンジと歯ブラシを使っていました。スポンジは主に塩分を落とすのに使います。表面ならば乳剤が塗ってないのでしっかりとこれで塩分を落とせます。状態のよいものであれば、裏面にも使いますが、剥がれないよう、慎重に。
歯ブラシはこびりついた砂や泥を落とすのに使います。ただ、フィルムを傷つけやすいのでそれ以外の目的には使っていません。道具はそれぞれ環境が異なるでしょうから、最適なものを。

状態のあまり良くないネガ。フィルムの層が見えています。下から、シアン、マゼンタ、イエロー。イエロー層が水分に負けてワカメのようになっていますが、なるべく取らずに残すようにします。また、カラーネガはベースがオレンジ色に着色されているのですが、それがみんな溶けています。フィルムより上のところに洗浄で落ちた塩分(?)が浮いているのも見えます。このような状態でも、プリントしてみるとしっかりと像が残っているときはあります。

洗浄後、もう一つのバットを使ってすすぎをします。すすぎのバットを別にすることで水交換の回数を減らすことができます。ここでもフィルム両端をはさんで、撹拌。洗浄ほどしっかりやらずともよいとは思います。

すすぎ後、フィルムについた水滴を落とします。水滴が残っていると、乾燥後に痕がついてしまうからです。僕はプライベートでも使用している専用のスポンジを買いました。500円くらいです。表裏、写真のようにはさんで拭き取りますが、裏面の状態が良い場合のみです。裏面が剥がれやすくなっている場合、表面だけ拭き取ります。目が細かく、水分を吸収でき、かつホコリや糸くずがフィルムにつかないものであれば専用のものでなくとも代用できそうです。

水分を拭き取ったネガは吊るして乾燥させます。ここでも専用のものが手に入らないため、洗濯バサミで代用。洗濯バサミだと傷がつくので像の写っていないパーフォレーション部分に止めます。また乾燥中にクセがつかぬよう、下も洗濯バサミでとめてオモリにします。ホコリが舞わない乾燥した場所が乾燥場所には理想的ですが、現場では必ずしもその場所が手に入るわけではないでしょうから、なるべくそれに近い環境で乾燥させてあげてください。とりあえず長くなってきたのでここまで。次回は乾燥後のことを書きます。

2011-11-14 | カテゴリー 写真 | タグ