ネタバレ上等!ラストシーンの美しいゴダール映画マイベスト6

シンゴジラが面白いそうですね。久々映画館に行きたくなっています。一方で、各種SNSやらブログ等をはじめとしたインターネット上では感想や評論などの情報が簡単に手に入ります。こちらが見ようとせずとも目に入ってくることもあります。中には映画のあらすじを直接的に書いたものもあり、人はそれをネタバレと呼びます。

ネタバレするな!と怒る声もありますが、僕が思うにストーリーなんてものは映画のごく一部でしかありません。ネタバレして観る気がなくなってしまう映画なんてのは鑑賞者が映画を観る目がないか、その映画が本当に面白くないかのどちらかです。ネタバレがダメなら原作ありきの映画なんて全く面白くないはずですし、終わりがわかっている古典映画にも価値がないと言っているのと同じです。同じ映画を何度も観るファンは悪趣味ということにもなります。

あらすじを知ってしまえばその映画を観てしまったことと同じ、ということでしょうか。だとすれば、僕はほとんどのハリウッド映画を既に見ています。それは(以下ネタバレ注意!)、ある目的を達成しようとする主人公に対してそれを妨害する敵や勢力が現れ、一度は想定外の大ピンチに陥るのですが、仲間と協力して最終的にその目的を達成するというものです。ネタバレすいませんでした。こういう映画は同じ結末を観て安心するために映画館に足を運ぶのだ、とも言えますね。

さて、そういったストーリー本位制の対極にあるとも言えるのがゴダール映画。学生時代から僕が敬愛して止まなかったジャン=リュック・ゴダールの映画、あえてラストシーンのよさで6つセレクトしてみました。以下、ネタバレ注意ですが、ゴダール映画はある意味、あらすじをもともと知ってる人が観に行くようなものですから、安心してネタバレされてください。むしろパンフレットが積極的にネタバレしてますし、なんだったら予告編でネタバレしている作品もあります。大安心です。思いついた順に挙げるので、順不同です。

アワーミュージック

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2000年代ゴダールの中でも、わかりやすさという点で傑作です。銃殺されたオルガが天国へ到達して終わりです。この映画はもともと『地獄編』『煉獄編』『天国編』と3部で構成されています。文学好きならお分かりですね。この構成はダンテの『神曲』です。ゴダール本人が映画監督役で出演しています。頭を天井に打つところはゴダールの可愛らしさが垣間見える、そしてそれは天国からのメッセージなのだとマニアの間で評論めいたことが話題になりました。

女と男のいる舗道

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60年代に戻りますが、これはもうヌーヴェルヴァーグ感がものすごい映画。デンマークはコペンハーゲン出身の今はフランスの大女優、アンナ・カリーナ演じるナナがモノクロのトーンに演出されて美しいですね。カール・ドライヤーの傑作「裁かるるジャンヌ」を観て涙するナナは名シーンです。ナナが哲学的思考をする次のシーンで撃たれて死亡して終わり。捨てられるような引きぎみのカットで終わるのがいいですね。同じく撃たれて終わる「勝手にしやがれ」と対称的。これぞまさにヌーヴェルヴァーグ。

ウイークエンド

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70年代ゴダールと60年代ゴダールの中間的作品だと僕は思っています。社会主義的、革命的な思想がところどころ見られます。ゲリラに囚われ、その銃撃戦の最中で死亡した夫の肉を知らずに食べる妻の映像がラストシーンです。書いててなんて字面だと思いました。お前の夫の肉だ、と明かされ、あとでおかわりをいただくわ、と発した妻の言葉に冷え切った夫婦関係の中に最後の愛、もしくは社会主義的社会における人間性を感じます。

新ドイツ零年

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「ドイツ零年」という名作が第二次世界大戦後にイタリアのロッセリーニ監督によって製作されるのですが、ゴダールの「新ドイツ零年」は東西ドイツの合併が時代背景にあります。スパイ役を演じるエディ・コンスタンチーヌは60年代のゴダール映画「アルファヴィル」でも同名のレミー・コーション役を演じています。だからなんだって話ですが、きっとゴダールからマニアへのファンサービスなのでしょう。東西ドイツ合併したにも関わらず、スパイとして東ドイツに送り込まれ、しかし、西ドイツから忘れられて東ドイツでずっと生活していたレミー・コーションが西ドイツ側へ帰る映画です。ドン・キホーテも出演しています。人生のほとんどをスパイとして費やした男の孤独がところどころで表現されています。西ドイツ側へ帰った時、ちょうどクリスマスシーズンでホテルに泊まった主人公が聖書を見て汚い言葉を吐いて終わりです。

男性・女性

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これもヌーヴェルヴァーグらしい唐突な終わりかたをする映画。実のところ、映画の中身はうろ覚えなのですが、ラストシーンのインパクトが圧倒的に強いです。主人公がアパートの窓から転落して死亡するのですが、そのシーンは特に描かず、いきなり友人らのインタビュー映像になって終わりです。前述した「女と男のいる舗道」もそうですが、ヌーヴェルヴァーグ時代のゴダール映画にはこの理不尽さこそ人生、と言わんばかりの終わりかたをする映画が多いです。

気狂いピエロ

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ゴダール映画のラストシーンで最も有名かもしれないのがこの映画です。むしろラストシーンが映画のポスターになってたりしますね。顔を青にペイントしたジャン=ポール・ベルモンドがダイナマイトを顔に巻いて火をつけます。爆発する一瞬前に後悔して火を消そうとしますが、そこは映画なので爆発します。ラストシーンは水平線。ランボーの詩が読み上げられますが、個人的にはDVD版の字幕よりもVHS版の字幕の訳のほうが好きですね。僕はフランス語、いまいちですけども。

いかがでしょうか。死んでばっかりだな、という感じですが、これは映画と人生の関係に真摯に向き合ってきたゴダールだからこそのラストシーンとも言えるでしょう、言えませんでしょうか。イマイチとっつきにくいとか思われがちなゴダールですが、あらすじを頭に入れて臨めば意外となんとかなるものもあります。この暑い夏休みの間にぜひ一作品でも鑑賞してみてはいかがでしょうか。もしかしたらあなたの人生に大きな映画を与えるかもしれません。ゴダール映画も早くAmazonあたりで定額で観られるようになる時代が来ればよいのですが、まだなのでぜひレンタルなどしてみてください。僕はシンゴジラ観に行きますけどね。

2016-08-13 | カテゴリー 日記 | タグ

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