デザインの学生

_DSC4665

昨日、母校の卒業制作展を見に行ってきました。なんとなく卒業以降、作品がつまらなくなった気がして、足が遠のいていたのですが、それでも何となく毎年学祭か卒展のどちらかは行っていたし、どちらも行く年もありました。そうして、いつの間にか卒業して5年がたっていました(昨日、同伴者に言われて初めて気づいた衝撃の事実)。僕は暇人ですか。で、早いうちに弁明しておくと、作品がつまらなくなったのではなく、僕が学生というものを少し離れてみることができるようになったのだということに気づきました。デザインの実用的な面からみたら学生の作品というものはなかなか現実味がありませんし、突っ込みどころ満載なコンセプトですし、話していることも滅茶苦茶なのです。それも当たり前です。卒業制作の作品がそのままデザインとして実現するなんてかなりレアな場合ですから。でも、卒業制作って、そういうプロ視点で作品を見る場じゃないよなあと気づいたのです。それに今になってようやく気づくとは。

_DSC4666

僕はそんなに偉そうに批評できるほどご立派な身分ではありませんが、ここは僕のブログですし、いい機会なので思ったことを書きます。じゃあ卒業制作の善し悪しって何かというと、やっぱり可能性じゃあないかなと思うのです。そんなのは学生のときでも聞く話だと思いますが、改めて外側から学生の作品を見る立場になってそれを感じます。学生のころは「もっと自由な発想で」とか「そんな現実的なのはつまらない」ということを先生方が言うのを誰しもが耳にして、学生自身もそれをわかったつもりでいるのですが、実は学生はわかっているつもりでわかっていないのです。やっぱりどこかしら、流行りの概念にとらわれていたり、言葉を選んだりしてしまうのです。誰しもそうですが、学生は学生としてでしか自分自身を見れないのところがあります。そして、実はプロのデザイナーのほうが自由な発想で現実的でない話をしていたりするものです。そう考えると、卒展では既成の概念にとらわれていない、自分自身の言葉で語られている、オリジナリティあふれる作品のほうが見る側からしたら面白いな、と思うし、目に留まるものなのです。そして、よい作品は、作者がこの先どう成長するんだろうなと期待させてくれます。

_DSC4668

つまり、既成にとらわれていない作品のパワーが必要です。なんだ、結局オリジナリティか、ということになりますが、オリジナリティを作品に出すことは難しいのです。このように実感したことを数年前の僕自身に教えたいなあと悔いました。学生だった僕自身に。しかし、前述したように学生は自分自身ではそれをわかったつもりでいます。では、どうやったら上手く伝えられるのでしょうか。具体的にどうすべき、と示す必要があります。

まずは、他人や流行りのスタイルを捨てるべきです。捨てるためには身につけなければなりません。ないものを捨てることはできませんから。だから、一番始めにすることはそれらをまずは自分自身に取り込むことでしょう。模倣でもいいですし、美術館やギャラリーに出かけたり、本を読んだり映画を観たり。思えば学生の頃の僕はここで止まっていたと思います。それだけでは所詮学生レベルの流行りを追ったスタイルに終始するだけになります。そうしたスタイルを斜に構えて見ることは一つの方法です。これ流行ってるけど、ほんとにいいのかな、と疑ってみる。ひねくれものになるわけです。そうすると、そうした流行りのスタイルが自身の作品には表れてこないので、手っ取り早いです。
そうはいっても、個人の性格などもありますから、誰にでもできるものではないかもしれません。誰にでもできる方法としては、これも当たり前のことですが、徹底的に与えられた問題に対して考え抜くことだと思います。頭の良さは関係ありません。どれだけ考えたかだと思います。卒業制作で手を抜いている作品は見ていて自然とわかるものです。結論が出たと思っても、そこで止まらず、さらに一歩踏み込んで考え抜いてほしいです。そうしてできた作品はきっとパワーを持つはずです。そこまで徹底的に作品に向かわせる根源のものは、やはり最後は情熱だと思います。情熱があるからこそ徹底的にやり抜くことができますし、センスが磨かれるのだと思います。しかし、四六時中、寝ても覚めてもひとつのことを考え続けるのは、実は意外と難しいです。全部どこかで聞いたことのあるような当たり前のことばかりですが、僕自身さえできているかとも聞かれたら返答に困ります。今日一日だらだら過ごしてすいませんでした。
僕自身と学生だった自分とこれからの学生へ、最後に一冊、読むべき本を挙げて終わります。

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

20世紀の大哲学者、バートランド・ラッセルの「幸福論」です。Amazonリンクを貼ってますが、僕には一銭も入ってきませんのでご安心ください。哲学本扱いですが、至って平易な文章で、哲学書にありがちな、この言葉の定義は当然知ってるよね、的な初心者放置の暗黙の了解はありません。僕が持ってるのは講談社文庫の翻訳なので、若干文章のニュアンスが違うとは思います。しかし、若いうちに読んでおいてとりあえずよかったなと思う一冊です。僕自身の人生にこの本がどのくらい活かされているかは別として、良書です。

_DSC4673

そんなことを帰ってから色々考えた卒展でした。加えて、ああ、こういうのを学生レベルっていうんだなぁとやってはいけないことを再確認させられたりもしました。ちなみに今回の写真は卒展の裏側をテーマに撮ったものでした。卒業生の皆様、大変おつかれさまでした。僕も励みになりました。

2014-03-03 | カテゴリー 日記 | タグ